ルベン・アモリムの3-4-3(スポルディング2019-20シーズン)

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ルベン・アモリム(Rúben Amorim)の2019年シーズンは波乱万丈だった。
9月にブラガのBチーム指揮官に就任。
12月23日には、トップチーム指揮官に昇格。
低迷していたチームを一変させた。
2020年1月25日にはリーグカップで優勝。
公式戦13試合で10勝2敗1分け(※うち2敗はヨーロッパリーグにて、すなわち国内は無敗)が。
結果だけでなく、繰り広げるサッカーも魅力的。
3月5日には、1,000万ユーロ(12億円)の違約金を出したスポルティングCPに引き抜かれた。
スポルティングは、ポルトガルプリメイラ・リーガでFCポルト、SLベンフィカと合わせて「3強」と称される強豪。
ただ、引き抜きの時点ではブラガは3位、スポルディングは4位で「3強」の牙城は崩されていたのだった。

https://twitter.com/Sporting_CP/status/1281279529592524801

フォーメーションはブラガ時代から3-4-3が基本。
中盤の4枚のうち、インサイドハーフは横並び。
3トップのうち、センターフォワードのほかの2人は中にいることが多く「インサイドフォワード」と称しているメディアもあった。
最終ラインでボールを持ったら、3バックは大きく横に広がる。
左右のCBはペナの角ぐらいまで。
その前の4人は、ウイングバックが大外のレーンに張って、インサイドハーフが3バックとは縦位置に並ばない。
すごい乱暴なAAでまとめるなら(笑)、最終ライン3と中盤の4で「WV」のジグザグを形成する。
7人のパス交換で、相手のプレスを回避しながら、前線への進出を模索する。

ポゼッションからの攻撃の基本はサイドでボールを持つこと。
サイドCBとインサイドハーフ、ウイングバックのトライアングルでサイドを突破できればいいんだろうけど、今の時代、相手もそこまで間抜けじゃない。
なので、3トップのうちひとりが降りてきて、相手最終ラインと中盤のラインの間に位置する。
一方、逆サイドのウイングバックが非常に高い位置まで上がって、3トップのうち残っている2人と同じ高さにまで位置。
「FWのうち残った2人」とウイングバックで疑似3トップを形成して、降りてきたFW1枚、逆サイドのウイングバックは寄りすぎず、なるべく5レーンを抑えるようにする。
そこから、インサイドハーフがボックスtoボックスで攻め上がることで、空間的優位とともに数的優位に立とうとする。

総じて、ボジション取りと「3トップ+ウイングバック」のコンビネーションに優れており、国内リーグのライバルで強烈なプレッシングをするチームがないため、好調にシーズンを終えられたのかなぁ、と思った。

https://twitter.com/ZoneSCBraga/status/1209524696804409352

【J2第11節】京都サンガF.C. 2-2 水戸ホーリーホック

京都サンガF.C. 2-2 水戸ホーリーホック
日時:2020年8月12日(水)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(3,749人/雨のち曇 26℃ 75%)
主審:上村篤史
32′-京都/ジュニオール・シウヴァ・フェレイラ “ジュニーニョ”
42′-水戸/ンドカ・ボニフェイス
55′-京都/ピーター・マドゥアブチ・ウタカ
64′-水戸/中山仁斗

■京都サンガF.C.(3-1-4-2)
GK34:若原智哉
DF19:麻田将吾
DF23:ヨルディ・バイス
DF6:本多勇喜
MF10:庄司悦大
MF2:飯田貴敬(82′-DF30:石櫃洋祐)
MF29:中野克哉(69′-MF7:ヘナン・カルヴァーリョ・モタ “レナンモッタ”)
MF41:金久保順
MF8:荒木大吾(82′-MF32:上月壮一郎)
FW17:ジュニオール・シウヴァ・フェレイラ “ジュニーニョ”(75′-FW18:野田隆之介)
FW9:ピーター・マドゥアブチ・ウタカ

■水戸ホーリーホック(4-2-2-2)
GK50:松井謙弥
DF3:前嶋洋太(88′-DF13:岸田翔平)
DF2:住吉ジェラニレショーン
DF4:ンドカ・ボニフェイス
DF23:外山凌
MF6:平野佑一
MF5:木村祐志(69′-MF27:松崎快)
MF11:村田航一(46′-FW18:深堀隼平)
MF10:山口一真
FW16:山谷侑士(69′-MF8:安東輝)
FW9:中山仁斗(81′-FW48:アレフ・シウヴァ・メロ “アレフ・ピットブル”)

狙われる庄司の“脇”

え、まだゴール裏に菊紋の旗を掲揚し続けるん?
それも一番目立つところに。
町田戦でも見かけて、なんだかなぁと思ってた。
スポーツに思想を持ち込んで、チームが“損”することはあっても、“得”することが何もない。
サンガのスタッフは何も言わないのかな。

そんな運営側の“脇の甘さ”同様、きょうの京都は守備に“脇の甘さ”があった。
――という、話の素早い切り替え!
京都と戦う相手に共通して見えてきた攻め方が、
・一旦京都を5バックの守備陣系にさせる
・フォワードが最終ラインより戻って庄司の横で楔のパスを受ける
というもの。
特に後半、連戦の疲れかだいぶ脚が動かなくなっていた庄司に対し、水戸の攻撃陣はワンフェイク入れて庄司を交わして前へ…というシーンが頻発。
だいぶボールを支配されて、守備は破綻していた。
よく逆転されずに済んだというのが正直な感想。
若原のビッグセーブがなかったら、結果はきっと違うものになっていただろう。

今季のJ2は、戦術的に練られたチームが多い。
京都が採用している3バック、1アンカーでの、ウイングバックを起点にした戦いは、ある程度対応されてしまっているようだ。
そういえば昨シーズンも、4-3-3の極端なポゼッションスタイルに対策が進んで以降、なかなか勝てなくなってしまったことを思い出す。
はたして今シーズンも同じ轍を踏んでしまうのか、あるいは、早い段階でアジャストできるのか。

【J2第10節】モンテディオ山形 3-4 京都サンガF.C.

モンテディオ山形 3-4 京都サンガF.C.
日時:2020年8月8日(土)19:03KO
会場:山形県総合運動公園陸上競技場 “んだスタ”(2,865人/雨 23.4℃ 88%)
主審:井上知大
22′-山形/野田裕喜
31′-京都/ピーター・マドゥアブチ・ウタカ
37′-京都/ピーター・マドゥアブチ・ウタカ
42′-山形/山岸祐也(pen.)
47′-山形/山岸祐也
53′-京都/ピーター・マドゥアブチ・ウタカ
87′-京都/ピーター・マドゥアブチ・ウタカ

■モンテディオ山形(4-2-3-1)
GK21:櫛引政敏
DF6:山田拓巳(89′-DF4:三鬼海)
DF23:熊本雄太
DF5:野田裕喜
DF19:松本怜大
MF7:岡﨑建哉
MF17:中村駿
MF40:渡邊凌磨(71′-MF18:南秀仁)
MF11:山岸祐也
MF25:末吉塁(89′-FW33:高橋潤哉)
FW13:大槻周平(71′-FW9:ヴィニシウス・ヴァスコンセロス・アラウージョ)

■京都サンガF.C.(3-1-4-2)
GK34:若原智哉
DF16:安藤淳(82′-DF19:麻田将吾)
DF23:ヨルディ・バイス
DF6:本多勇喜
MF10:庄司悦大
MF2:飯田貴敬(46′-DF30:石櫃洋祐)
MF29:中野克哉(71′-MF17:ジュニオール・シウヴァ・フェレイラ “ジュニーニョ”)
MF41:金久保順
MF8:荒木大吾(85′-MF14:中川風希)
FW18:野田隆之介(71′-MF7:ヘナン・カルヴァーリョ・モタ “レナンモッタ”)
FW9:ピーター・マドゥアブチ・ウタカ

ピーター・マドゥアブチ・ウタカ選手(京都)
「自分にとって、日本で初めてのハットトリックさ。
チームが勝ったこと加えて、ダブルでうれしいよ。
思うに、山形の戦い方は驚きであり、素晴らしかった。
数多くのチャンスを作られた一方で、われわれはあまりチャンスをつくれなかった。
ただ、チャンスをものにできた数で勝ることができたんだよ」

實好礼忠コーチ(京都)
「山形さんの“圧”、出足の良さに終始圧倒されてしまったゲームでした。
そんな中で、よくウタカが決めてくれました。
本当に僕自身も経験のしたことのないゲームで、こうなって(※ウタカの4点目に頭を抱えて)しまった」

石丸清隆コーチ(山形)
「4バックに切り替えて、プラン通りにゲームは進められた。
だが、個人の能力にやられてしまった。
もちろん4失点もしたというのは、われわれに隙があったということだが。
3ゴール?
欲をいえば、もっと取れたし、勝ちゲームにしなければいけなかった。
攻守のバランスを見直さなければいけないというのが率直な感想。
個が強い相手であろうが、しっかり守っていかなければいけない」

うたかたの夢カード

山形の「京都対策」が完璧すぎた。
京都のビルドアップ、3バック+庄司のパス回しに対して、まず庄司に山岸がマンマーク。
3バックに1トップの大槻と、サイドハーフの2人がプレッシング。
また、京都がサイドにボールを運んで突破を掛けようとしても、サイドハーフ&サイドバックが防波堤を作る。
ボールを奪っては、京都が「5-3」 のラインを形成しても、中盤「3」の間や「5-3」の間に選手が顔を出して、楔のパスを入れまくっていた。

試合開始からずっと山形に押されてて、「これ、4バックに変更しないと、じきに決壊するなぁ…」と思ってたら、まさか3点も奪われるとね。
そして、まさかまさか4ゴールを奪えて、アウェイで勝てるとはね。
實好さんは、シーズン開幕前「3バックも4バックもできるように」と言った記憶がある。
ただ、きょうも3-1-4-2(守備時は5-3-2)はキープ。
71分、ジュニ&モッタを入れて、「3-1-5-1(守備時は5-4-1)」にすることで、中盤「4」にして穴を埋めた格好だった。
相手がどんな陣形であれ、取り急ぎ3バックを熟成させていく――という考えなのかなぁ。

【J2第9節】京都サンガF.C. 1-0 FC町田ゼルビア

京都サンガF.C. 1-0 FC町田ゼルビア
日時:2020年8月2日(日)18:33KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(3,062人/曇 29.5℃ 70%)
主審:窪田陽輔
81′-京都/金久保順

■京都サンガF.C.(3-1-4-2)
GK34:若原智哉
DF16:安藤淳
DF23:ヨルディ・バイス
DF6:本多勇喜
MF10:庄司悦大
MF2:飯田貴敬(85′-DF30:石櫃洋祐)
MF29:中野克哉(63′-MF14:中川風希)
MF41:金久保順
MF8:荒木大吾(85′-MF31:福岡慎平)
FW18:野田隆之介(73′-MF17:ジュニオール・シウヴァ・フェレイラ “ジュニーニョ”)
FW9:ピーター・マドゥアブチ・ウタカ(85′-DF19:麻田将吾)

■FC町田ゼルビア(4-2-2-2)
GK1:秋元陽太
DF22:小田逸稀(90′-FW20:ドリアン・バブンスキー・フリストフスキー)
DF5:深津康太
DF4:水本4億円
DF2:奥山政幸
MF25:佐野海舟
MF18:髙江麗央
MF14:吉尾海夏(81′-MF19:土居柊太)
MF10:平戸太貴
MF7:アレン・マソヴィッチ(46′-FW13:岡田優希)
FW16:安藤瑞季(46′-FW9:ステファン・シュチェポヴィッチ)

前半から攻めあぐねゴールは遠く、ぬか喜びもありつつ、へこたれることなく直後にゴール。
ホーム無敗継続、ウノゼロ勝利わっしょい。
ただ、“攻撃の手詰まり感”はここ数節続いている。
1対1の局面で個人技やコンビネーションでの突破ができず、ファイナルサードのところでパスミス、トラップミスも多々。
サイドからのクロス以外、“ゴールへの道筋”がチームで固まってないように見受けられた。
フォワードが下がってきてインサイドハーフが前へ走る…といった、攻撃の“奥行き感”にも欠けていたように思える。
対する町田攻撃陣が、数は少ないものの中央でのダイレクトパスでシュートへ直結するプレイを見せていたのとは対照的。
2トップとインサイドハーフの人選に試行錯誤しているのも、この4人の関係でオートマティックな動きが見せられてないからかな?
得点シーンは、相手に寄せられながらも頑張った中川が起点になったもの。
“結果”を出してくれたことで、今後もっと実力を発揮していってほしいな。

【J2第8節】ファジアーノ岡山 1-1 京都サンガF.C.

ファジアーノ岡山 1-1 京都サンガF.C.
日時:2020年7月29日(水)19:03KO
会場:岡山県総合グラウンド陸上競技場 “Cスタ”(1,524人/曇 26.4℃ 90%)
主審:松本大 “マネックス別人”
19′-岡山/イ・ヨンジェ
49′-京都/安藤淳(ヘッド←CK:石櫃)

■ファジアーノ岡山(4-2-2-2)
GK22:ポープ・ウィリアム
DF21:椋原健太(73′-DF23:松木駿之介)
DF4:濱田水輝
DF20:チェ・ジョンウォン
DF25:野口竜彦
MF7:白井永地
MF14:上田康太(64′-FW18:齊藤和樹)
MF17:関戸健二
MF19:上門知樹(87′-MF29:ユ・ヨンヒョン)
FW15:山本大貴(73′-FW44:清水慎太郎)
FW9:イ・ヨンジェ(87′-FW24:赤嶺真吾)

■京都サンガF.C.(3-1-4-2)
GK34:若原智哉
DF16:安藤淳
DF23:ヨルディ・バイス
DF19:麻田将吾(75′-DF2:飯田貴敬)
MF10:庄司悦大
MF30:石櫃洋祐
MF29:中野克哉(75′-FW13:宮吉拓実)
MF41:金久保順
MF8:荒木大吾(87′-MF31:福岡慎平)
FW14:中川風希(60′-FW9:ピーター・マドゥアブチ・ウタカ)
FW18:野田隆之介(87′-MF17:ジュニオール・シウヴァ・フェレイラ “ジュニーニョ”)

https://twitter.com/GoalJP_Official/status/1288432823888732160

ターンオーバーで興味深い人選…ゴクリ。
麻田は今季初出場、中野は開幕戦途中交代出場以来。
本多に代えて左CBに左利きの麻田を使ったのは、センターバックからの球出しを重視している証拠かと思った。
一本、逆サイド対角へと高精度のロングパスを送っていたのはしびれた。
ただ、本多と比べて、オーバーラップの迫力に欠けるのは否めない。
中野はドリブルという武器で、相手のバイタルでカオスを生み出すことはできていたのかなと。
一方、もうひとりのインサイドハーフ・金久保はアバウトなパス出し、ミスが多くて、どうしちゃったのか?という印象だった。
それでもフル出場というのは、首脳陣からの評価が高いのだろう。

失点は1ミスを素早く決められた感じ。
ゴールは、今季初のセットプレイからのもの。
岡山が守備重視だったこともあって、1on1の状態になっても、個人技でもグループとしても局面を打開することがほとんどできなかった。
ターンオーバー、アウェイでドロー、まぁ仕方ない結果だったと思った。