0-0x ヒロシマ
サンフレッチェ広島 0-0 (agg1-2) 京都サンガ
◇日時:2007年12月8日(土)16時04分キックオフ
◇会場:広島市広島広域公園陸上競技場 “広島ビッグアーチ”(晴/10.0℃/2万3162人)
◇主審:また君か西村雄一
※2試合トータル2-1で京都サンガのJ1昇格が決定


■サンフレッチェ広島(3-1-4-2)
GK1:下田崇
DF28:槙野智章
DF2:イリアン・ストヤノフ
DF19:盛田剛平
MF8:森崎和幸
MF5:駒野友一
MF 7:森崎浩司
MF27:柏木陽介
MF17:服部公太
(後半0分-MF16:リ・ハンジェ)
FW11:佐藤寿人
FW10:ウェズレイ・ハイムンド・ペレイラ・ダ・シウバ “ピチブー”
(後半26分-FW18:平繁龍一)
■京都サンガF.C.(3-4-1-2)
GK1:平井直人
DF35:角田誠
DF6:森岡隆三
DF5:手島和希
MF22:渡邉大剛
MF16:斉藤大介
(後半11分-FW9:アンドレ・ピント・カンダカン)
MF17:石井俊也
MF36:中谷勇介
MF15:中山博貴
FW10:パウロ・アントニオ・デ・オリヴェイラ “パウリーニョ”
(後半44分-DF2:秋田豊)
FW31:田原豊
(後半22分-FW7:徳重隆明)
加藤久コーチ(京都)
「広島はビルドアップがうまく、前半45分はなんとかもったが、後半はこのままだとへばってしまうと思って4-3-3にシステムを変更しました。
前線からもっとプレスをかけて、前で奪って早く攻める狙いでした。
もちろん守備面でリスクはありましたが、とにかく前へ行くんだという意識を選手にもってほしかったのです。
J1での戦い?
今までやってきた、組織的に守って時間をかけずに早く攻めるというサッカーを構築したいと思っています」
ミハイロ “ミシャ”・ペトロヴィッチ・コーチ(広島)
「わたしのサッカー人生のなかでいちばん大きな敗戦となった。
責任を感じている。
1点が、1点が遠かった」
風が、強くなった。
陽が落ちたビックアーチ。
時が進むに連れ、寒さが身に染みるようになった。
そして、試合内容にも震えてばかりいた。
勝たないことにはJ1残留がない広島は、前がかりだった。
槙野智章・盛田剛平の両センターバックが頻繁にサイドライン際をオーバーラップ。
京都はひたすら押し込まれ、耐えていた。
後半、4バックにして盛り返すも、広島も最後の攻勢をかけてくる。
後半20分あたりから、何度時計を見ただろう。
20分、30分…。
とにかく、針が進まない。
左サイドの回った駒野がカットインしてミドル—-ポストをかすめる。
右サイドを突破した柏木が強い一撃—-クロスバーに直撃する。
ゴールを奪われれば、残り時間から考えると”終戦”が濃厚。
寒さに震えながら、相手のシュートが枠を外れてくれと祈るだけになった。
ようやく、第四審判がサイドライン際に立つ。
ボードに書かれた数字は「4」。
ロスタイム4分。
はたして今までの人生の中でこんなに長い240秒はあっただろうか。
ラスト、広島がフリーキックのチャンス。
大混戦、最後は槙野のオーバーヘッドがポストに当たって、外れる。
ビジター席で見ていると、何が起きたかまったく見えない。
広島ファンの声援がため息に変わったことで、シュートが外れたことがわかった。
西村主審がの手が、ゆっくり上がる。
タイムアップの笛。
歓声、悲鳴、嗚咽、安堵、跳躍。
耳をつんざいて絶叫。
揺れる足下。
気がつけば、寒さを忘れている自分がそこにいたのだった。
京都の選手たちは、よく守り抜いた。
正直いうと、途中からはこのまま行けそうな雰囲気はあった。
でも、たとえ1点を取られたとしても…。
そんなにショックには感じなかったと思う。
満足できるパフォーマンスを、選手たちはピッチで表現してくれていたからだ。
もちろん、来年J1かJ2かで大きな違いはあるのだろうけど、なんというか、それを
「まぁ、いいや」
と思える、超越した気持ちになれた。
自分が応援するチームが入れ替え戦に出て、そして、勝った。
それを目の前で見られて、本当に楽しかった。
だけど、サッカーを愛することって、いったいなんなのか。
空港でうつむき加減の広島ファンを目にして、そう思わざるをえなかった。
敗北に絶望し、勝利に歓喜する。
はてなく繰り返されるサイクルのなかで、立ち止まることも休むこともできないでいる。
ただ、ひとつだけ確かなのは、その中毒のような状態さえもが人生を充実させてくれているということだ。
おれは一生、震えるような寒さを感じるたび、ビックアーチでの90分を思い出すだろう。
体に突き刺さる寒風を、耳にこだまする歓声の響きを、そしてスタンドの前ではしゃぐ選手の姿を思い出すだろう。
そして、喜びに暖かく包まれて、ほほえんでいた自分のことも。