【J1第30節】京都サンガF.C. 0-1 清水エスパルス

京都サンガF.C. 0-1 清水エスパルス
日時:2025年9月20日(土)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万9,056人/曇 27℃ 86%)
主審:長峯滉希
※12′-清水/髙橋利樹PK失敗
75′-清水/矢島慎也

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(77′-MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス)
MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”(46′-MF16:武田将平)
MF39:平戸太貴(71′-MF48:中野瑠馬)
FW14:原大智
FW93:長沢駿(71′-MF27:山田楓喜)
FW18:松田天馬(63′-MF29:奥川雅也)

■清水エスパルス(3-4-2-1)
GK16:梅田透吾
DF4:蓮川壮大
DF24:キム・ミンテ
DF66:住吉ジェラニレショーン
MF28:吉田豊(71′-DF70:高木践)
MF17:弓場将輝(63′-MF21:矢島慎也)
MF98:マテウス・ブエノ・バチスタ
MF14:山原怜音
FW11:中原輝(63′-FW23:北川航也)
FW33:乾貴士(71′-MF8:小塚和季)
FW38:髙橋利樹 (90+2′-FW15:千葉寛汰)

降りかかる灰をかきわけ走るだけ

必然の敗戦だったのかもしれない。
11試合ぶりの黒星を喫し、首位から陥落した。

あらためていうことでもないけど、京都サンガというチームはJリーグでも特異なアイデンティティをもつ。
攻撃時はボール保持に固執せず、自陣でのプレー時間をできれば短縮して、縦に速い攻撃で敵陣に押し入る。
逆に、相手にボールを持たれれば、サイドバックも参加して高い位置でのボール奪取を狙うというハイインテンシティなスタイル。
だからこそ、やりにくいのは「ボールを持たされる」展開だ。
つまり、前半戦の柏レイソルがやってきたこと。
きょうの清水も、ある程度京都にボールを持たせて、狡猾に〝一撃〟のチャンスを狙っていた。
チーム得点王・エリアスの欠場(累積警告)よりも、戦術的な部分が敗因として大きいと感じた。

清水5バックによる「縦封じ」

この日の清水は5バックで守備ブロックを形成。
5枚のディフェンダーで最終ラインの横幅を確保しつつ、中盤の選手がハーフスペースを献身的に埋めることで、京都が最も得意とする「DFラインの裏」への侵入ルートを徹底的に消してきたのだ。
曺貴裁監督も「守備の堅い相手に前半は工夫が足りず、ビルドアップ時の距離も離れてしまった」と振り返ったように、京都は「速く・裏へ」の得意パターンをなかなか出せなかった。
京都の選手たちが自陣でボールを奪っても、パスの出しどころに困るシーンが何度も見られた。
前半のxG(ゴール期待値)=京都0.3・清水0.5というデータが、京都にとってボールは持てどもチャンスが作れなかったことを示している。

ハーフタイムで曺監督は動いた。
「相手が一番嫌がるところにボールを運ばせて、そこで奪い返してから次の攻撃に移る」
との狙いから、ボールの引き出し方に長けた武田将平を投入。
60分には宮本優太の縦パスから原大智がシュートを放つ場面が生まれるなど、京都は攻撃の迫力を取り戻す。

最終的なシュート数は京都16本、清水7本。
数字の上では京都が攻め続けたことは明白だ。
だがその内訳は、枠内シュートが京都3本に対し清水5本。
京都の攻撃は決定機創出にまでは至らず、逆に清水は少ないチャンスを効率的に得点に結びつけた。
曺監督も「清水さんのゴール前で体を張った守備をこじ開けられなかった。堅い守備を称賛するしかない」と試合を総括している。

一瞬の「エアポケット」

失点場面を振り返ると、攻勢を強める中で一瞬の守備の隙を突かれたものだった。
福岡慎平がパスをカットして前進しようとした際にトラップが大きくなり、相手のボディコンタクトによってボールを失う。
そして相手のパス交換に目線を奪われ、高木にポケットに侵入され、最後は中盤から遅れてゴール前に入ってきた矢島をフリーにしてしまった。
清水の秋葉忠宏監督は「練習で繰り返した崩しを選手が体現した」と語り、矢島自身も「ゴール前へ入っていくのはチームの狙い」と説明している通り、相手にとって「狙っていた」ゴールを決められたのだ。

武田将平は「(福岡)慎平のところでイレギュラーなところがあったので、矢島に(マークに)ついていくべきだった」と悔やんだが、この失点は個人の責任ではなく、チーム全体の守備の問題から生まれたものだろう。
京都の守備はボールサイドに圧力を集中させるが、その副作用として逆サイドや中央バイタルエリアのカバーが薄くなる。
特に、アンカー・福岡の脇のスペースは相手が狙ってくるところ。
失点シーンも、パスカットで一瞬前がかりになったところでボールを失い、中央スペースの管理が甘くなったことが決定打となった。

「強いチーム」に必要なもの

原大智は「大きな戦力を欠いた試合で、これも自分たちの実力だと思う」と語った。
確かに、エリアスの不在は痛かった。
だが本質的な問題は、京都が得意とする〝オープンな展開でのトランジション勝負〟に相手を巻き込めなかったとき、代替策=「プランB」を持ち得なかったことではないだろうか。

タイトルを争うチームならば、あらゆるスタイルの挑戦を退けなければならない。
アグレッシブなスタイルを維持しつつも、相手がブロックを敷いたときにどう崩すか。
バイタルエリアの管理など、守備の秩序をどう保ち続けるか。
この課題を克服できるかどうかが、京都が本当に上位に値するチームたりうるかの試金石になる。
今季の強さはフロックなのか、本物なのか。
残り試合で真価が問われる。

【J1第29節】サンフレッチェ広島 1-1 京都サンガF.C.

サンフレッチェ広島 1-1 京都サンガF.C.
日時:2025年9月12日(金)19:03KO
会場:広島県広島市広島サッカースタジアム “Eピース”(2万5,369人/曇 28.4℃ 78%)
主審:木村博之
63′-広島/佐々木翔
88′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←マルコ・トゥーリオ)

■サンフレッチェ広島(3-4-2-1)
GK1:大迫敬介
DF33:塩谷司
DF3:山﨑大地
DF19:佐々木翔
MF15:中野就斗
MF14:田中聡
MF35:中島洋太朗(90+1′-DF4:荒木隼人)
MF24:東俊希(90+1′-MF13:新井直人)
FW41:前田直輝(46′-FW17:木下康介)
FW51:加藤陸次樹(61′-FW98:ヴァレール・ジェルマン)
FW9:ジャーメイン良(86′-MF6:川辺駿)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF22:須貝英大(56′-DF2:福田心之助)
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(75′-MF48:中野瑠馬)
MF16:武田将平(56′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
MF39:平戸太貴(72′-FW11:マルコ・トゥーリオ・オリヴェイラ・レモス)
FW27:山田楓喜(46′-MF29:奥川雅也)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”
FW14:原大智

たとえどんな敵が相手でも

「ただ、ゴールが決まらなかった。それだけだ」
広島の指揮官・ミヒャエル・スキッベは試合を振り返って、そう繰り返した。
確かにスタッツだけを見れば、ホームチームの圧勝だったはずだ。
シュート数は広島21本に対して京都はわずか5本。
ゴール期待値は2.91対0.41(※Jリーグ公式サイトテキスト速報より)。
ボールは終始広島が支配し、首位・京都を自陣深くに押し込んだ。

しかし、最終的にスコアボードに刻まれた数字は「1-1」。
最後に〝笑った〟のは、耐えに耐えた末に貴重な勝ち点1をもぎ取った京都だったかもしれない。

今季の自信がもたらした〝負けないメンタリティ〟

「ゲームとしてはホームの声援を受けた広島さんのゲームだったと思います」
京都の曺貴裁監督は潔く認めた。

この日の広島の強さは、攻守一体となったプレッシングにあった。
「前半は自分たちがボールを持ったときの〝出口〟の共有がうまくいかなくて、連続攻撃をくらう場面がありました」
曺監督が認めた通り、京都は後方からボールを繋ごうとしても、広島の素早い囲い込みによって自由を奪われ、苦し紛れのロングボールを蹴らされる場面が散見された。

さらに、広島の選手たちが「このピッチに慣れていて五分五分のボールを味方につけるプレーが多かった」(曺監督)こともあり、セカンドボールへの反応でも京都を圧倒。
中盤でボールを回収しては素早くサイドに展開し、厚みのある攻撃を繰り返した。
受け身に回った京都は自陣でのブロック形成を余儀なくされ、攻撃の糸口をまったく掴めないまま時間が過ぎていく。

後半18分、ついに広島が均衡を破る。
猛攻の中から生まれたこぼれ球をDF佐々木翔が押し込み、ホームのサポーターは歓喜に沸いた。
しかし、その後も圧倒的優位に立ちながら追加点を奪えないことが、徐々に重圧となってのしかかる。

対する京都は、劣勢を自覚したうえで現実的な戦い方を選択した。
「0-1にされても2点目を取られなければ、どこかで流れが来るという典型的な試合だったと思います」と曺監督が語ったように、いつか追いつけるというメンタリティがチームに通底していた。
宮本優太も失点直後に「みんなで集まって『1失点に抑えよう!』という話をしました」と明かす。
試合内容では劣っていても、勝点を拾うためのゲームプランを遂行し続けたのだ。
また、相手の運動量が落ちてきたことと「相手ダブルボランチの背中で起点を作り、サイドで人数をかけた」(曺監督)ことで、ボールが持てる時間も増えていった。

一瞬の隙を見逃さない〝個のクオリティ〟

そして、ドラマが生まれた。
後半43分、この試合が負傷からの復帰戦だったマルコ・トゥーリオが、右サイドからグラウンダーのクロスを供給。
これに反応したのが、エースのラファエル・エリアスだ。
三浦知良の記録を塗り替えるクラブ新記録の5試合連続ゴールであり、得点ランキング単独トップに立つ今季16点目。

ゴール後は、娘に向けた〝アンパンマン・パフォーマンス〟を見せたエリアス。
「ディフェンダーは自分の左足をしっかりと防いでくるだろうなというイメージはできていた。うまく回転できて相手の股を通したシュートが打てて、キーパーが動いた逆を取ることができた」と得点シーンを振り返った。
相手の動きを予測し、一瞬の判断でDFの股を抜き、GKの逆を突く。
組織的な守備網を閃きで破壊する、まさにワールドクラスの一撃だった。
「ああいうシュートは練習の中でもよく打っている」という言葉通り、偶然ではない〝準備された技術〟が劣勢のチームを救った。

一方、広島としてはディフェンスラインはおおむね整っていたものの、右サイドでのマルコの抜け出し、そしてグラウンダーパスへの対応が一瞬後手になったことが命取りになった。
GK大迫敬介が「前後半を通して決定的なピンチはなくて、失点したシーンだけだった」と言うように、たった1回のミスを悔やんでも悔やみきれない格好だろう。

5年間の成長がもたらした勝ち点1

「スキッベ監督にしてみたら勝点2を落としたという試合だったと思いますけども、われわれとしては拾ったというよりも、普段やってることがそのまま出て勝ち点1を獲得した試合になった」という曺監督の言葉が、この試合の本質を突いていた。

このドローで京都はクラブのJ1新記録となる「10試合負けなし」を達成し、首位の座を堅守した。
圧倒的に攻めながら勝ち点2を失った広島と、耐え抜いて勝ち点1を掴み取った京都。
試合内容と結果は相関しない——サッカーでよくある結果と言ってしまえばそれだけだが、京都が勝ち点1を取れたことはチームの成長だと評価していいだろう。

最後は、曺さんのコメントで締めておく。
「劣勢の中でメンタル的に最後まで切れずに1点を取った、追いついた。そして、あわよくばカウンターで最後取れそうな場面もありました。そういう戦い方を精神的に切れないでできるということは、(監督就任以来)5年間やった中での選手の成長だと思います」

【J1第28節】京都サンガF.C. 5-0 ファジアーノ岡山

京都サンガF.C. 5-0 ファジアーノ岡山
日時:2025年8月30日(土)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(20,030人)
主審:大橋侑祐
15′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←原)
20′-京都/原大智(左足)
30′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←原)
80′-京都/中野瑠馬(右足) ※J1初ゴール
90+2′-京都/奥川雅也(左足←中野)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助(87′-DF22:須貝英大)
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平
MF16:武田将平(77′-MF48:中野瑠馬)
MF39:平戸太貴(87′-MF88:グスタヴォ・ボナット・バヘット)
FW27:山田楓喜(64′-MF29:奥川雅也)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(77′-FW93:長沢駿)
FW14:原大智

■ファジアーノ岡山(3-4-2-1)
GK49:スベンド・ブローダーセン
DF4:阿部海大
DF18:田上大地
DF43:鈴木喜丈
MF88:柳貴博(70′-MF50:加藤聖)
MF24:藤田息吹
MF41:宮本英治(46′-MF14:田部井涼)
MF39:佐藤龍之介
FW19:岩渕弘人(46′-FW22:一美和成)
FW8:江坂任(75′-MF33:神谷優太)
FW99:ルーカス・マルコス・メイレレス “ルカオ”(61′-FW98:ウェリック・シウヴァ・ピント “ウェリックポポ”)

あの夏、いちばん大きな果実

5-0(鼻血ブー)!!!!!
最後に奥川が決めて、京都サンガがすごすぎて、ちょっとだけ涙が溢れたよね。
2試合連続の圧勝、爆勝、完勝。
今節もまた首位を守った。
集まったお客さんたちも喜んで帰ってくれたに違いない。

開幕節、フワッとしたまま敗れてしまった岡山に、借りを返すべく挑んだこの試合。
対岡山としてまずプランニングされていたのは、ハイプレスを〝いなす〟ための土台づくりだった。
京都はいつも以上に、最終ラインと中盤でボールを落ち着かせ、攻撃に一呼吸置いていた。
のんびり回すのではない。
それは、新潟によるプレスの温度を測り、圧力の向きと強さを確かめる作業だった。
福岡がうまく〝へそ〟の位置に立ってパス成功数294本、ポゼッション率54%という数字を記録したことが、きょうの戦い方を物語っている。
ゲーム序盤の平戸の横パス以外、低い場所でパスが引っかかることも少なかった。

そうして相手のハイプレスをいなすことで、得点へのルートが生まれた。
具体的には、両サイドでの突破。
特に右サイドで目立った動きが、「タッチライン際(=外)で相手を釣り、ハーフスペース(=内)に差し込み、最終ラインの背後へ抜けた選手にボールを送る」というものだ。
その角度、速度は不規則。
速く突くときもあれば、いったん止めてから角度を変えて刺すときもある。
同じロジックの〝別解〟を連続して提示することで、岡山の守りを攪乱させて、破壊に導いた。
右ウイングでスタメンに入った山田楓喜がボールを落ち着かせ、マルコとは違う形で攻撃をオーガナイズしたことも注目したい
福田心之助のスプリント回数がいつもより少なかったのは、逆に山田楓喜を走らせる(=スルーパスを出す)側に回ることが多かったからだろう。

ファイナルサードへボールを送ると、そこに待ち構えるのがラファエル・エリアスだ。
先制点は相手GKが反応できないスピードでの強烈なシュート。
2点目は相手DFを背負ってボールを収め、半歩のズレをも許さない左足がスタジアムをどよめかせた。
「まず彼(エリアス)を見る」という原大智のサポートも大きい。
2人の間にあるのは、裏のスペースや〝怖い〟空間のイメージ共有。
認識がシンクロしているからこそ、エリアスの2ゴールが生まれたのだ。

5得点の一方で、守備は3試合連続での無失点。
曺さんは「失点しないためではなく、得点するために何をするか。その質が上がった結果としてのクリーンシート」と振り返っていた。
この言葉を解読するならば、
・パス回しでのミスが少なかった(=自陣でのボールロストが少なかった)
・なので、ボールを保持しながら、最終ラインを押し上げることができた
・一方、ボールを奪われても「二度追い、三度追い」で再奪取を狙い、相手の反転攻撃を遅らせることができた
ため、失点リスクを最小化できているということかなと思う。

さらに忘れていけないのが、交代選手がもたらす推進力。
中野瑠馬の待ってました、J1初ゴール。
ケガから戻ってきた奥川雅也の、テクニカルなゴール。
京都にとって選手交代は〝疲労の置換〟ではなく、もう一度前へ踏み込むための〝スイッチ〟と言える。
曺さんの言う「ベンチのエネルギーがわれわれの戦術」という言葉どおり、選手交代で強度を一段と上げることができていた。

相手をいなして、刺す。
前向きな守備と選手交代で、リード後も主導権を握り続ける。
間違いなく「オトナ」で強いチームの戦いぶりを見せてくれた。
天皇杯で敗退したのは残念だったけど、京都にとって「実り」が大きかった8月だった。
さぁ9月、シーズンは残り10試合——。

【J1第27節】FC東京 0-4 京都サンガF.C.

FC東京 0-4 京都サンガF.C.
日時:2025年8月24日(日)19:04KO
会場:東京都調布市東京スタジアム “味スタ”(2万7,591人/晴 31.9℃ 51%)
主審:イヴァン・アルシデス・バルトン・シスネロス
8′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(pen.)
13′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(pen.)
45′-京都/鈴木義宜(ヘッド←平戸)
81′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足)

■FC東京(4-2-2-2)
GK81:キム・スンギュ
DF5:長友佑都
DF24:アレクサンダー・ショルツ
DF30:岡哲平
DF6:バングーナガンデ佳史扶
MF18:橋本拳人(84′-MF27:常盤亨太)
MF37:小泉慶(77′-MF10:東慶悟)
MF28:野澤零温(63′-FW40:マルコス・ギリェルメ・ヂ・アウメイダ・サントス・マトス)
MF33:俵積田晃太(84′-FW25:小湊絆)
FW39:仲川輝人(63′-FW19:マルセロ・ヒアン・シウヴェストリ・ドス・サントス)
FW26:長倉幹樹

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助(71′-DF22:須貝英大)
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平
MF39:平戸太貴
MF16:武田将平(71′-MF48:中野瑠馬)
FW14:原大智(63′-MF27:山田楓喜)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(84′-MF29:奥川雅也)
MF18:松田天馬(84′-FW93:長沢駿)

けものがれ、俺らの狼と

いや〜、スタジアム観戦で、こんなに安心してゲームを見ることができたのはいつ以来だろうか(大歓喜)。
8分、13分、立て続けのPK奪取で2得点。
そのあとはボールを持たれたけれど、FC東京に崩されるシーンは少なかった。
4点取れたことも、0点で抑えられたことも、両方うれしかった。

さて、試合データを紐解くと、きょうの京都の戦い方がよくわかる。

ポゼッションは34%、パス成功数139本。
ボール奪取位置のマップを見れば、相手陣深部、ゴール前やペナルティエリア脇で何度もボールを奪えていた。
京都は相手の保持を許しながらも、〝最高の狩場〟でプレスを仕掛けて奪い、回収した瞬間から少ないタッチでゴールへ迫った。
まるで狼の群れが獲物をねらうかのように——。
2点目のPKはGKと最終ラインを追い込み、誤ったファーストタッチを引き出した結果。
ダメ押しとなった4点目も、相手のビルドアップを高い位置で引っかけたところから生まれたものだ。

ゴール期待値(xG)は京都 2.65 に対し、FC東京は 2.14。
シュート数で劣っても決定機の質では上回ったことが、効率の差となってスコアに表れた。
曺さんは「相手のゴールキックこそチャンス」と語り、自分たちが愚直に繰り返してきた狙いがこの夜に結実したと誇らしげに語った。

もちろん、その戦い方を結果に結びつけたのは選手たちの献身だ。
エリアスは「われわれサンガのスタイルが出た。しっかりプレスをかけてボールを奪えたところからのゴールだった」と振り返り、松田天馬は「練習でやってきたことが出ただけ。(ハイプレス)をやらなきゃ、僕が出ている意味がない」と言い切った。
2人の言葉の端々に、“やり続ける”ことへの迷いのなさが滲み出る。

そして数字の裏側には、高温の中も走り回って、体を投げ出し、忠実に自分の役割を果たす選手たちの姿があった。
FC東京は、フォワードが中盤に降りてポゼッションに参加したり、詰まったらCBがドリブルで持ち上がったりで、繋いだパスはなんと443本。
しかし、 その多くは京都が「危険ではない」と見なしたエリアで回されたものにすぎない。
FC東京側にファイナルサードを攻略する〝絵〟は見えなかった。
最後は困って、ボランチの選手が浮き玉でサイドハーフの選手を走らせることもしばしば。
この夜、京都は保持率ではなく「決定機の効率」で試合を支配したのだ。

試合後、曺さんはいつも以上に饒舌だった。
「(2点目のPKについて)ああいうゴールをアクシデントによるものだと捉えられるのは、監督としてすごく残念」
「動かすだけで自陣で何本パスを繋いでも相手が揃っていたらほとんど意味がない。それだったら相手の背後に入れるようなスキームを作った方が効率的だと思っています」
という言葉は、松橋さんの耳にはどう響いただろうか?

対照的なスタイルを持つ両チームの対戦。
京都の完勝は、プランニングとプレッシングによって掴み取った〝必然〟だった。

【J1第26節】京都サンガF.C. 1-0 東京ヴェルディ

京都サンガF.C.1922 1-0 東京ヴェルディ1969
日時:2025年8月16日(土)19:04KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万8,300人/雨 27.7℃ 88%)
主審:福島孝一郎
66′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←原)

■京都サンガF.C.1922(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF5:アピアタウィア久(79′-DF3:麻田将吾)
DF50:鈴木義宜
DF22:須貝英大(63′-DF44:佐藤響)
MF10:福岡慎平
MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”(63′-MF48:中野瑠馬)
MF39:平戸太貴
FW11:マルコ・トゥーリオ・オリヴェイラ・レモス(56′-MF27:山田楓喜)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(79′-MF18:松田天馬)
FW14:原大智

■東京ヴェルディ1969(3-4-2-1)
GK1:マテウス・カウデイラ・ヴィドット・ヂ・オリヴェイラ
DF6:宮原和也
DF2:深澤大輝
DF3:谷口栄斗
MF19:松橋優安(63′-MF17:稲見哲行)
MF7:森田晃樹
MF16:平川怜
MF40:新井悠太(79′-FW38:唐山翔自)
FW8:齋藤功佑(63′-FW71:平尾勇人)
FW14:福田湧矢(72′-FW25:熊取谷一星)
FW9:染野唯月(72′-FW45:寺沼星文)

ウィニングパターン・レコグニション

26節を終わって、首位 (;・`д・́)…ゴクリ
前半やや押されるも、後半盛り返し、最後は決定力の差が出たという結果だろうか。
そして、今シーズンはもう対戦がないからか、ゲーム後の両指揮官・選手のコメントに核心をつく内容が多く、興味深かった。
ちょっとまとめておこう(俺用メモ)。

▼前半
試合後の曺さんいわく、「相手のディフェンスやボランチに早く食いついて、(東京Vの)シャドーをフリーにしてしまった」。

東京Vがシャドーをうまく使って「縦ズレ=ライン間でのボール受け」&「横ズレ=レーン移動」で、ボールを動かしゲームを支配する。
京都は3トップ+2インサイドハーフ(IH)のハイプレッシャー(”前プレ”)が空転。
5人の背後=アンカー脇のハーフスペースに起点をつくられ、守備のために背走することもしばしばだった。
もちろん、こうした狙いがうまくいったのは東京Vボランチコンビのテクニックがあってこそ、なのは間違いない。
森田晃樹、平川怜はともキープ力とパス力があり、相手からのプレッシャーを受けても簡単にはボールを奪われない技術をもっていた。

なお、東京Vの”戦術的な設計”は下記の通り。

①CFの裏抜けで、京都最終ラインを”ピン留め”
——「自分が裏を狙い続けることで、(齋藤・湧矢ら)シャドーや中盤が空く」(染野唯月のコメントより)。
染野が「裏を狙い続ける」ことで京都CBを下げさせ、京都の3トップ+インサイドハーフと最終ラインの“間(ギャップ)”を拡大。
結果として、東京Vのシャドーや中盤の選手がフリーで前を向ける状況を意図的につくられた。
城福さんも試合後、スペースメイクのため裏へのボール、長いボールを活用したと言及している。

②ハーフスペースの占有で、京都の”プレスの矢を折る”
——「相手のアンカー脇を使うことは、前半狙いどおりにやれていた」(福田湧矢のコメントより)。
東京Vのシャドーの選手が京都のアンカー・福岡の両脇に降りることで縦パスを入れるコースが生まれ、京都の”前プレ”から逃げ道ができた。
京都としては、前向きに守備に出た背後をうまく使われた。

③シャドーのファジーな位置取りで、大外レーンも”制圧”
——「相手は4バックなので、どうしてもシャドーの選手は捕まえづらい」(同じく、福田湧矢のコメントより)。
SBが高い位置まで進出して相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪えたそのまま攻撃に転じるのが、京都の特徴。
そこで、東京Vのシャドーたちは立ち位置を意識することで、京都のSBに対して「シャドーを捕まえるのか、あるいはウイングバックを捕まえるのか」迷わせるようにしたとのこと。

前半43分、東京Vの超決定機(松橋のダイビングヘッド)は太田のグッドセーブに助けられたものの、ここで先制されていたら、試合結果はどうなっていたかわからなかった。

▼後半
ハーフタイムで、京都が修正を加える。
プレスの深追いを抑え「横パスを誘って”その次のボール”を狙う」ように切り替えたのだ。
具体的には、ボールホルダーへのハイプレスを控えつつ、京都インサイドハーフの2人がアンカー脇・ハーフスペースをケア。
東京V中盤の自由度を削ぎ、主導権を奪回した。
原大智も「守備のやり方を変えて自分たちの時間が増えた」と振り返っている。

そして、66分に先制して以降、東京Vのゴール期待値(xG)の伸びは小刻み(前半終了時で0.9弱、試合トータルで1.11)。
この数字は、後半は東京Vがボールは保持すれど、厚みのあるフィニッシュまでには繋げられなかったことを示唆しているだろう。
79分、アピアタウィア久の負傷(足を攣った)を受けて、麻田・松田天馬を投入。
強度と走力を再充填して、終盤までコンパクトさを維持して守り切った。

曺さんの試合後のコメント、
「ハーフタイムに少し修正したことがうまくいった」
「戦術的にもすごく大人の試合ができた」

という言葉どおりの後半だったかなと思う。
京都の特徴であるハイプレス一辺倒ではなく、ハイプレスをある程度「捨て」、実利を取った。
その結果の勝ち点3、と言えるだろう。

「勝ち筋」をいくつも持っていることはいいことだ。
いいゲーム内容だったとは言えないかもしれないけれど、チームとしての成熟を感じた一戦だった。