【J1第33節】京都サンガF.C. 1-1 川崎フロンターレ

京都サンガF.C. 1-1 川崎フロンターレ
日時:2025年10月4日(土)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万9,265人/曇 22.4℃ 86%)
主審:上村篤史
8′-川崎/伊藤達哉
38′-京都/須貝英大(右足←松田)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF22:須貝英大
MF10:福岡慎平(11′-MF16:武田将平)
MF48:中野瑠馬(65′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
MF39:平戸太貴(85′-MF88:グスタヴォ・ボナット・バヘット)
MF29:奥川雅也(46′-MF27:山田楓喜)
FW14:原大智
MF18:松田天馬(65′-FW93:長沢駿)

■川崎フロンターレ(4-2-3-1)
GK1:チョン・ソンリョン
DF31:ファンウェルメスケルケン際
DF22:フィリップ・ウレモヴィッチ
DF5:佐々木旭
DF13:三浦颯太
MF19:河原創
MF8:橘田健人
MF17:伊藤達哉(85′-FW24:宮城天)
MF14:脇坂泰斗
MF23:マルシオ・アウグスト・ダ・シウヴァ・バルボーサ “マルシーニョ”(74′-MF41:家長昭博)
FW9:エリソン・ダニーロ・ヂ・ソウザ(74′-FW91:ラザル・ロマニッチ (88′-警告×2=退場))

痛み分けの価値はどれくらい

他会場の結果によって暫定2位に浮上しても、ベンチに笑顔はなかった。
曺貴裁監督は言う、「今日は勝点2を落としてしまったとみんなが捉えるべき」。
福田心之助は唇を噛む、「この時期の勝点1は、極端に言えば0に等しい」。
昨シーズンと比べれば2位なんて望外の結果とも思えるが、選手・スタッフともまったくあきらめていない。
ゆえに、悔しさが募る結果となった。

スペースを失い、停滞したダイナミズム

勝ち点3が取れなかったのは、ひとえに川崎の「京都対策」が周到だったからだろう。
具体的には、第一に「スペースの封鎖」。

京都の推進力は、走るサイドバックがつくる。
福田、須貝が高い位置を取り、幅と厚みを足していく——その十八番(おはこ)が、この日は出せなかった
川崎はボールを失えば一気に戻る。
サイドハーフのマルシーニョ、伊藤達哉までが最終ラインに吸い込まれるように下がり、5バック、6バックで外側のルートを閉じた。
京都はボールを保持しても外側からの追い越しがなく、川崎の守備ブロックを揺さぶるための有効な手段をひとつ封じられてしまったのだ。

また、オフ・ザ・ボールで選手が絶えず裏のスペースを狙う「縦に速いサッカー」も抑え込まれた。
前述の通りサイドのスペースを消され、中央も固められたことで、京都はボールの出口を見つけられずにいた。
福田いわく、「僕らの見ているところがいつもより単調だった。ボールを持てる時間が多くなった分、探す時間が多くて単調になってしまった」。
縦のルートが塞がれ、ブロック手前のパス交換が繰り返され、ときに無理な縦パスでボールを失う。
川崎が意図的にボールを持たせたことによって、京都はむしろリズムを崩したのだ。
前半11分、福岡の負傷で急遽投入された武田将平も言う。「ちょっと慌てるというか、攻め急ぐ、仕掛けが早過ぎる感じがあった」。

テクニックの前に空転したハイプレス

攻撃が停滞するならば、守備からリズムを作りたいのが京都のスタイル。
ボールを失った瞬間に即時奪回を狙うハイプレスは、チームの生命線である。

しかしこの日、川崎の技術の前にハイプレスが空転させられた。
特に中盤の橘田健人、脇坂泰斗は、京都の激しいプレッシャーを受けても慌てることなくボールをキープ。
巧みなターンや短いパス交換でプレスをいなし、いとも簡単に前を向いて攻撃の起点をつくった。
これにより、京都は「高い位置でボールを奪ってのショートカウンター」をまったく発動できなかった。

川崎の長谷部茂利監督が「試合の入りそのもの、プレーのほとんどがよかった」と振り返ったように、アウェイチームは京都の土俵で真っ向から渡り合った。
京都のプレッシングは、組織的な連携よりも勢いが優先されるきらいがある。
その隙を川崎の選手たちは的確に見抜き、個々のクオリティで上回ることで、京都の武器を無力化してみせたのだ。

遠かった「あと1点」

そんな苦しい流れの中、前半38分に京都らしい形から同点に追いつく。
平戸太貴の浮き球パスに奥川雅也が抜け出して裏を取り、中央へ折り返す。
ボールは松田天馬を経由し、最後に走り込んできたのはSBの須貝英大だった。
試合を振り出しに戻した須貝は、「サイドバックがあのような場面でゴール前に顔を出すところは自分の良さでもあるので、それをやり続けた結果」と胸を張った。

この一撃はあったものの、前半全体の出来は決してよくなかった。
曺監督はハーフタイムに「サイドからしっかりポケットを取るような動きの中でボールを入れていかないとわれわれのよさも出ない」と、攻撃の狙いをあらためて選手たちに徹底。
後半はボールの動かし方もやや改善され、チャンスの数は増えたが、相手に退場者が出て数的優位に立った後も、最後まで勝ち越しゴールは奪えなかった。
勝利に必要な「あと1点」が遠かった。

「よい内容だからよかったなと思う試合じゃない。どうして勝ち切れなかったのか、みんなで反省しなきゃいけない」と武田。
川崎が見せたように、シーズン最終盤、相手は徹底的に京都の長所を消しにかかってくるだろう。
相手の対策を上回り、自分たちのサッカーを貫き通せるか。
まだ見たことない景色へ……。
真価が問われる残り5試合となる。

【J1第32節】セレッソ大阪 1-2 京都サンガF.C.

セレッソ大阪 1-2 京都サンガF.C.
日時:2025年9月28日(日)18:33KO
会場:大阪府大阪市長居球技場(2万1,935人/雨のち曇 26.4℃ 69%)
主審:椎野大地
44′-京都/松田天馬(右足←CK:平戸)
57′-C大/ディオン・クールズ
87′-京都/長沢駿(ヘッド←CK:山田)

■セレッソ大阪(4-2-1-3)
GK1:福井光輝
DF27:ディオン・クールズ
DF31:井上黎生人
DF44:畠中槙之輔
DF66:大畑歩夢
MF8:香川真司(82′-MF35:吉野恭平)
MF10:田中駿汰
MF48:柴山昌也(82′-FW13:中島元彦)
FW77:ルーカス・フェルナンデス(25′-MF19:本間至恩)
FW9:ハファエル・ホジェリオ・ダ・シウヴァ “ラファエル・ハットン”(88′-FW55:ヴィトール・フレザリン・ブエノ)
FW11:チアゴ・エドゥアルド・ヂ・アンドラーヂ(88′-DF22:髙橋仁胡)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF22:須貝英大(59′-MF44:佐藤響)
MF10:福岡慎平(75′-FW93:長沢駿)
MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス(59′-MF48:中野瑠馬)
MF39:平戸太貴(75′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
MF18:松田天馬
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(25′-MF27:山田楓喜)
FW14:原大智

That’s The Way (We Like It)

試合開始からわずか25分。
背番号9がピッチ外へ運ばれる光景を前に、京都陣営には重い空気がのしかかった。

とはいえ、絶体絶命の状況も、京都サンガF.C.というチームの真価を証明する舞台に過ぎなかった。
ピッチ上の誰もは下を向かず、むしろ「自分たちがやるしかない」と覚悟を決めたかのように顔を上げる。
先制点、そして終盤の劇的な決勝ゴール。
曺貴裁監督が「全員で勝った勝利」というように、チームの総合力でつかみ取った本当に価値ある勝ち点3だった。
そして、その一体感こそ、サポーターにとって何より胸を打つものかもしれない。
すばらしいゲームだった。

思いの強さ、揺るがずに

前半終了直前の44分、得たコーナーキック。
平戸太貴が蹴った低い弾道は、ニアで待つ須貝英大の足元へ。
彼が背後へ流すと、走り込んだのは松田天馬。
計算された動きから放たれたシュートが、ゴールネットを鮮やかに揺らす。
偶然ではない。用意された必然のゴールだ。
試合後、松田は確信をもって語った。
「みんなの協力なしでは絶対に決められなかった。コーチングスタッフも含めて『これぞ京都サンガ!』というゴールだったと思います」
先制弾は、逆境の中で己のアイデンティティを取り戻したチームの、力強い〝咆哮〟でもあった。

しかし、後半57分、京都はセットプレーから同点弾を浴びる。
試合は振り出しとなり、スタジアムの空気は明確にホームのセレッソへ傾いた。
今季、過去2回の対戦で味わった逆転負けの記憶が、悪夢のように蘇る。
曺監督はこの時間帯をこう述懐している。
「あそこで『優勝』という文字を忘れていたら、おそらくやられていたと思います。選手たちは僕が思っている以上に『優勝したい』と思ってピッチに立って戦っていることがきょうハッキリ分かった」

監督が信じた選手たちの思いは、プレーとして立ち上がる。
誰もがもう一歩足を出し、体を張る。
「ピンチの場面でもディフェンスが体を投げ出すプレーが多かったと思いますし、それがサンガらしさ」(曺監督)。
「みんなが体を張って耐えられることが、いまの京都の強さ」(松田天馬)。
再三、身を挺して突破を阻んだ宮本優太も「押し込まれる時間も長かったですけど、うまくみんなでコミュニケーションを取りながら守れた」と振り返った。
劣勢でも前へ出る姿勢は、シーズンを通して積み上げてきたものだ。

試合を決めたベテランの一撃

試合は終盤、1-1のまま、やや膠着状態に入る。
引き分けが現実味を帯び始めた後半42分、サンガはCKを得る。
ここで、途中投入のベテラン——背番号93、長沢駿が結果を残した。
山田楓喜がニアへ送ったボールに、フリーで飛び込む。
完璧なタイミングで捉えたヘディングは、GKの手を弾いてゴールに突き刺さった。
劇的な決勝弾。
ベンチから選手が飛び出し、ゴール裏のサポーターは抱き合い、歓喜が弾ける。
殊勲の37歳は、ヒーローインタビューで多くを語らない。
だが、その一言一言に人柄とチームへの想いが凝縮されていた。
「決められて良かったです。でも、僕のゴールというよりかは、みんなのゴールだと思います。みんながつないでくれてCKを獲得して、よいボールを上げてくれてのゴールだったので。みんなに感謝しています」

タイムアップの笛が鳴り、選手たちはピッチで歓喜した。
単なる勝ち点3ではない。
エース不在という最大の危機を、チーム一体で乗り越えたという揺るぎない事実。
チームがまた一段、強くなった瞬間だった。
試合後、曺監督は万感を込め、この勝利を総括する。
「交代で出た選手も含めて全員で勝った勝利ということで、監督として非常にうれしい。私も選手もクラブも全員で頂点を目指すということは、きょうの試合で証明できたと思います」

長沢は言った。
「(優勝と言われることを)よいプレッシャーだと捉えて、きょうみたいに戦っていければ食らいついていけるはずです」
残り6試合。これから立ち向かう重圧は計り知れない。
しかし、この日のピッチに刻まれた〝不屈〟の90分間は、紫の戦士たちがさらなる困難をも乗り越えていけると期待させるに十分だった。

【J1第31節】京都サンガF.C. 1-1 FC町田ゼルビア

京都サンガF.C. 1-1 FC町田ゼルビア
日時:2025年9月23日(火)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万8,964人/曇 24.8℃ 64%)
主審:飯田淳平
16′-町田/岡村大八
※74′-ハファエウ・エリアスPK失敗
90+3′-京都/原大智(pen.)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF22:須貝英大(85′-MF44:佐藤響)
MF16:武田将平(85′-FW93:長沢駿)
MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス(67′-MF39:平戸太貴)
MF48:中野瑠馬(85′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
FW29:奥川雅也(56′-MF27:山田楓喜)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”
FW14:原大智

■FC町田ゼルビア(3-4-2-1)
GK1:谷晃生
DF5:イブラヒム・ドレシェヴィッチ
DF50:岡村大八(62′-MF18:下田北斗)
DF3:昌子源
MF6:望月ヘンリー海輝
MF16:前寛之(89′-MF23:白崎凌兵)
MF19:中山雄太
MF26:林幸多郎
FW20:西村拓真(75′-FW10:ナ・サンホ)
FW7:相馬勇紀(75′-FW22:沼田駿也)
FW9:藤尾翔太 (75′-FW15:ミッチェル・デューク)

絶望と歓喜のカタルシス

首位返り咲きを狙うには、勝ちたかったホームゲームだった。
結果は勝ち点1。
とはいえ、決して悲観する内容ではなかった。

ターンオーバーと若き才能の躍動

清水戦の敗戦から中2日。
曺貴裁監督は動いた。
先発6人を入れ替え、特に中盤3人は前節から総入れ替えの布陣を敷く。
その意図として指揮官は「最近、試合の入りで、ボールを取られても後ろの選手が対応してくれるだろうという雰囲気が気になっていた」ことを挙げた。

アグレッシブさへの渇望。
それは、ピッチで躍動する若き才能によって確かな熱を帯びていく。
J1初先発となる大卒ルーキー・中野瑠馬は、指揮官が「1人名前を挙げるならば」と自ら切り出して、「前への推進力と運動量が落ちず、非常に頼もしかった」と絶賛するほどの輝きを放った。
身長169cmの小さな身体でピッチを縦横無尽に駆け回り、セットプレーのキッカーも任される。
前半27分には強烈なミドルシュートで相手ゴールを脅かした。
本人は「チャンスが来ると思って、準備していた」と静かに語ったが、間違いなくきょうの試合で京都を牽引したひとりだった。

エースの責任感

試合の主導権を握りながらも、前半16分、町田得意のロングスローからの一瞬の隙を突かれ、先制を許す。
ビハインドを背負ったまま迎えた後半、京都はさらに攻勢を強めた。
そして74分、ついに決定機が訪れる。
左サイドバックの須貝英大がエリア内で倒され、PKを獲得したのだ。

キッカーは、絶対的エース・エリアス。
誰もが同点を確信した瞬間、キックはGK谷晃生のファインセーブに阻まれてしまった。
膝から崩れ落ちる背番号9。
スタジアムに響き渡る悲鳴とため息。
試合終了後、エリアスは「自分がすべての責任を取りたい」と、誠意と責任感に満ちあふれたコメントを発している。

託された想いと〝強心臓〟

時間は無情にも過ぎていく。
連敗の2文字が、サポーターたちの脳裏を支配しかけていた。
だが、曺監督が「こんなに仲のよいチームは見たことがない」と評する絆が、土壇場で奇跡を呼び起こす。

後半アディショナルタイム、途中出場の佐藤響が再びエリア内で倒され、きょう2度目のPKを獲得。
ボールのもとに選手たちが集まる。
福田心之助はエリアスにもう一度蹴ってほしいと願っていた。
だが、エリアスは個人の「名誉回復」よりも、チームの勝利を選んだ。
「いや、きょうは俺じゃない、(原大智に)任せたい」。
彼は原大智の肩を叩き、ボールを託した。

「自分としても蹴りたかったし、(一度PKを止められている)プレッシャーは特になかったです」と、試合後飄々と語った原大智。
「ハファの思いも込めて蹴りました」という右足から放たれたボールは、GKの逆を突き、ゴールネットに突き刺さった。
歓喜の爆発。
それは、単なる同点ゴールではなかった。
チーム全員で掴み取った魂の一撃だった。

さらに、試合は終わらない。
ラストプレー、ゴール正面で得たFK。
キッカーの山田楓喜は「決められる自信があったので、俺が蹴るしかないと思った」と振り返る。
左足から放たれた完璧な軌道のシュートは、しかし無情にもクロスバーを直撃。
劇的な逆転勝利は、ほんの数センチの差でこぼれ落ちた。

勝ち点1の意味

試合後、山田は「勝点2を落としたって感じが強い」と悔しさを滲ませた。
だが、敵将の言葉が、この引き分けの価値を物語っていた。
「本当に悔しい。ただ、京都さんも素晴らしいチームで、我々が勝点3を取るに値するようなゲーム内容だったのかと言われれば、やはり1-1が妥当だったのかなという思いもあります」(黒田剛監督)。
最後まで攻め続けた京都の執念が、相手にそう認めさせたのだ。

京都の曺貴裁監督の見方も、選手たちの悔しさとは少し違った。
「想像以上によく走ってくれた。自分たちらしい試合」。
中2日の相手を走行距離で圧倒し、最後まで攻め続けた姿勢。
そこに、敗戦を引きずらない選手たちの、確かな成長を見ていた。
「間違いなく上に行くための素地はできてきている」。

絶望的なPK失敗から、チームの絆で掴んだ劇的な同点劇。
そして、最後の最後に訪れた逆転の好機。
喜び、安堵、そして強烈な悔しさ。
そのすべてを味わい尽くしたドローゲームは、アウェイの町田戦同様ドラマチックな内容だった。
残り7試合。
初の栄冠に向けた紫の戦士たちの物語は、この夜またひとつ、忘れられないチャプターを刻んだ。
試合後サポーターからチームに送られた大声援が、その証左だった。

【J1第30節】京都サンガF.C. 0-1 清水エスパルス

京都サンガF.C. 0-1 清水エスパルス
日時:2025年9月20日(土)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万9,056人/曇 27℃ 86%)
主審:長峯滉希
※12′-清水/髙橋利樹PK失敗
75′-清水/矢島慎也

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(77′-MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス)
MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”(46′-MF16:武田将平)
MF39:平戸太貴(71′-MF48:中野瑠馬)
FW14:原大智
FW93:長沢駿(71′-MF27:山田楓喜)
FW18:松田天馬(63′-MF29:奥川雅也)

■清水エスパルス(3-4-2-1)
GK16:梅田透吾
DF4:蓮川壮大
DF24:キム・ミンテ
DF66:住吉ジェラニレショーン
MF28:吉田豊(71′-DF70:高木践)
MF17:弓場将輝(63′-MF21:矢島慎也)
MF98:マテウス・ブエノ・バチスタ
MF14:山原怜音
FW11:中原輝(63′-FW23:北川航也)
FW33:乾貴士(71′-MF8:小塚和季)
FW38:髙橋利樹 (90+2′-FW15:千葉寛汰)

降りかかる灰をかきわけ走るだけ

必然の敗戦だったのかもしれない。
11試合ぶりの黒星を喫し、首位から陥落した。

あらためていうことでもないけど、京都サンガというチームはJリーグでも特異なアイデンティティをもつ。
攻撃時はボール保持に固執せず、自陣でのプレー時間をできれば短縮して、縦に速い攻撃で敵陣に押し入る。
逆に、相手にボールを持たれれば、サイドバックも参加して高い位置でのボール奪取を狙うというハイインテンシティなスタイル。
だからこそ、やりにくいのは「ボールを持たされる」展開だ。
つまり、前半戦の柏レイソルがやってきたこと。
きょうの清水も、ある程度京都にボールを持たせて、狡猾に〝一撃〟のチャンスを狙っていた。
チーム得点王・エリアスの欠場(累積警告)よりも、戦術的な部分が敗因として大きいと感じた。

清水5バックによる「縦封じ」

この日の清水は5バックで守備ブロックを形成。
5枚のディフェンダーで最終ラインの横幅を確保しつつ、中盤の選手がハーフスペースを献身的に埋めることで、京都が最も得意とする「DFラインの裏」への侵入ルートを徹底的に消してきたのだ。
曺貴裁監督も「守備の堅い相手に前半は工夫が足りず、ビルドアップ時の距離も離れてしまった」と振り返ったように、京都は「速く・裏へ」の得意パターンをなかなか出せなかった。
京都の選手たちが自陣でボールを奪っても、パスの出しどころに困るシーンが何度も見られた。
前半のxG(ゴール期待値)=京都0.3・清水0.5というデータが、京都にとってボールは持てどもチャンスが作れなかったことを示している。

ハーフタイムで曺監督は動いた。
「相手が一番嫌がるところにボールを運ばせて、そこで奪い返してから次の攻撃に移る」
との狙いから、ボールの引き出し方に長けた武田将平を投入。
60分には宮本優太の縦パスから原大智がシュートを放つ場面が生まれるなど、京都は攻撃の迫力を取り戻す。

最終的なシュート数は京都16本、清水7本。
数字の上では京都が攻め続けたことは明白だ。
だがその内訳は、枠内シュートが京都3本に対し清水5本。
京都の攻撃は決定機創出にまでは至らず、逆に清水は少ないチャンスを効率的に得点に結びつけた。
曺監督も「清水さんのゴール前で体を張った守備をこじ開けられなかった。堅い守備を称賛するしかない」と試合を総括している。

一瞬の「エアポケット」

失点場面を振り返ると、攻勢を強める中で一瞬の守備の隙を突かれたものだった。
福岡慎平がパスをカットして前進しようとした際にトラップが大きくなり、相手のボディコンタクトによってボールを失う。
そして相手のパス交換に目線を奪われ、高木にポケットに侵入され、最後は中盤から遅れてゴール前に入ってきた矢島をフリーにしてしまった。
清水の秋葉忠宏監督は「練習で繰り返した崩しを選手が体現した」と語り、矢島自身も「ゴール前へ入っていくのはチームの狙い」と説明している通り、相手にとって「狙っていた」ゴールを決められたのだ。

武田将平は「(福岡)慎平のところでイレギュラーなところがあったので、矢島に(マークに)ついていくべきだった」と悔やんだが、この失点は個人の責任ではなく、チーム全体の守備の問題から生まれたものだろう。
京都の守備はボールサイドに圧力を集中させるが、その副作用として逆サイドや中央バイタルエリアのカバーが薄くなる。
特に、アンカー・福岡の脇のスペースは相手が狙ってくるところ。
失点シーンも、パスカットで一瞬前がかりになったところでボールを失い、中央スペースの管理が甘くなったことが決定打となった。

「強いチーム」に必要なもの

原大智は「大きな戦力を欠いた試合で、これも自分たちの実力だと思う」と語った。
確かに、エリアスの不在は痛かった。
だが本質的な問題は、京都が得意とする〝オープンな展開でのトランジション勝負〟に相手を巻き込めなかったとき、代替策=「プランB」を持ち得なかったことではないだろうか。

タイトルを争うチームならば、あらゆるスタイルの挑戦を退けなければならない。
アグレッシブなスタイルを維持しつつも、相手がブロックを敷いたときにどう崩すか。
バイタルエリアの管理など、守備の秩序をどう保ち続けるか。
この課題を克服できるかどうかが、京都が本当に上位に値するチームたりうるかの試金石になる。
今季の強さはフロックなのか、本物なのか。
残り試合で真価が問われる。

【J1第29節】サンフレッチェ広島 1-1 京都サンガF.C.

サンフレッチェ広島 1-1 京都サンガF.C.
日時:2025年9月12日(金)19:03KO
会場:広島県広島市広島サッカースタジアム “Eピース”(2万5,369人/曇 28.4℃ 78%)
主審:木村博之
63′-広島/佐々木翔
88′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←マルコ・トゥーリオ)

■サンフレッチェ広島(3-4-2-1)
GK1:大迫敬介
DF33:塩谷司
DF3:山﨑大地
DF19:佐々木翔
MF15:中野就斗
MF14:田中聡
MF35:中島洋太朗(90+1′-DF4:荒木隼人)
MF24:東俊希(90+1′-MF13:新井直人)
FW41:前田直輝(46′-FW17:木下康介)
FW51:加藤陸次樹(61′-FW98:ヴァレール・ジェルマン)
FW9:ジャーメイン良(86′-MF6:川辺駿)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF22:須貝英大(56′-DF2:福田心之助)
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(75′-MF48:中野瑠馬)
MF16:武田将平(56′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
MF39:平戸太貴(72′-FW11:マルコ・トゥーリオ・オリヴェイラ・レモス)
FW27:山田楓喜(46′-MF29:奥川雅也)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”
FW14:原大智

たとえどんな敵が相手でも

「ただ、ゴールが決まらなかった。それだけだ」
広島の指揮官・ミヒャエル・スキッベは試合を振り返って、そう繰り返した。
確かにスタッツだけを見れば、ホームチームの圧勝だったはずだ。
シュート数は広島21本に対して京都はわずか5本。
ゴール期待値は2.91対0.41(※Jリーグ公式サイトテキスト速報より)。
ボールは終始広島が支配し、首位・京都を自陣深くに押し込んだ。

しかし、最終的にスコアボードに刻まれた数字は「1-1」。
最後に〝笑った〟のは、耐えに耐えた末に貴重な勝ち点1をもぎ取った京都だったかもしれない。

今季の自信がもたらした〝負けないメンタリティ〟

「ゲームとしてはホームの声援を受けた広島さんのゲームだったと思います」
京都の曺貴裁監督は潔く認めた。

この日の広島の強さは、攻守一体となったプレッシングにあった。
「前半は自分たちがボールを持ったときの〝出口〟の共有がうまくいかなくて、連続攻撃をくらう場面がありました」
曺監督が認めた通り、京都は後方からボールを繋ごうとしても、広島の素早い囲い込みによって自由を奪われ、苦し紛れのロングボールを蹴らされる場面が散見された。

さらに、広島の選手たちが「このピッチに慣れていて五分五分のボールを味方につけるプレーが多かった」(曺監督)こともあり、セカンドボールへの反応でも京都を圧倒。
中盤でボールを回収しては素早くサイドに展開し、厚みのある攻撃を繰り返した。
受け身に回った京都は自陣でのブロック形成を余儀なくされ、攻撃の糸口をまったく掴めないまま時間が過ぎていく。

後半18分、ついに広島が均衡を破る。
猛攻の中から生まれたこぼれ球をDF佐々木翔が押し込み、ホームのサポーターは歓喜に沸いた。
しかし、その後も圧倒的優位に立ちながら追加点を奪えないことが、徐々に重圧となってのしかかる。

対する京都は、劣勢を自覚したうえで現実的な戦い方を選択した。
「0-1にされても2点目を取られなければ、どこかで流れが来るという典型的な試合だったと思います」と曺監督が語ったように、いつか追いつけるというメンタリティがチームに通底していた。
宮本優太も失点直後に「みんなで集まって『1失点に抑えよう!』という話をしました」と明かす。
試合内容では劣っていても、勝点を拾うためのゲームプランを遂行し続けたのだ。
また、相手の運動量が落ちてきたことと「相手ダブルボランチの背中で起点を作り、サイドで人数をかけた」(曺監督)ことで、ボールが持てる時間も増えていった。

一瞬の隙を見逃さない〝個のクオリティ〟

そして、ドラマが生まれた。
後半43分、この試合が負傷からの復帰戦だったマルコ・トゥーリオが、右サイドからグラウンダーのクロスを供給。
これに反応したのが、エースのラファエル・エリアスだ。
三浦知良の記録を塗り替えるクラブ新記録の5試合連続ゴールであり、得点ランキング単独トップに立つ今季16点目。

ゴール後は、娘に向けた〝アンパンマン・パフォーマンス〟を見せたエリアス。
「ディフェンダーは自分の左足をしっかりと防いでくるだろうなというイメージはできていた。うまく回転できて相手の股を通したシュートが打てて、キーパーが動いた逆を取ることができた」と得点シーンを振り返った。
相手の動きを予測し、一瞬の判断でDFの股を抜き、GKの逆を突く。
組織的な守備網を閃きで破壊する、まさにワールドクラスの一撃だった。
「ああいうシュートは練習の中でもよく打っている」という言葉通り、偶然ではない〝準備された技術〟が劣勢のチームを救った。

一方、広島としてはディフェンスラインはおおむね整っていたものの、右サイドでのマルコの抜け出し、そしてグラウンダーパスへの対応が一瞬後手になったことが命取りになった。
GK大迫敬介が「前後半を通して決定的なピンチはなくて、失点したシーンだけだった」と言うように、たった1回のミスを悔やんでも悔やみきれない格好だろう。

5年間の成長がもたらした勝ち点1

「スキッベ監督にしてみたら勝点2を落としたという試合だったと思いますけども、われわれとしては拾ったというよりも、普段やってることがそのまま出て勝ち点1を獲得した試合になった」という曺監督の言葉が、この試合の本質を突いていた。

このドローで京都はクラブのJ1新記録となる「10試合負けなし」を達成し、首位の座を堅守した。
圧倒的に攻めながら勝ち点2を失った広島と、耐え抜いて勝ち点1を掴み取った京都。
試合内容と結果は相関しない——サッカーでよくある結果と言ってしまえばそれだけだが、京都が勝ち点1を取れたことはチームの成長だと評価していいだろう。

最後は、曺さんのコメントで締めておく。
「劣勢の中でメンタル的に最後まで切れずに1点を取った、追いついた。そして、あわよくばカウンターで最後取れそうな場面もありました。そういう戦い方を精神的に切れないでできるということは、(監督就任以来)5年間やった中での選手の成長だと思います」