【J1第36節】京都サンガF.C. 0-3 横浜F・マリノス

京都サンガF.C. 0-3 横浜F・マリノス
日時:2025年11月9日(日)14:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万9,828人/雨 16.7℃ 90%)
主審:長峯滉希
※28′-横浜FM/ジョルディ・クルークスPK失敗
35′-横浜FM/谷村海那
72′-横浜FM/天野純
90+2′-横浜FM/植中朝日

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF22:須貝英大
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響(46′-DF2:福田心之助)
MF32:齊藤未月(46′-MF10:福岡慎平)
MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス
MF39:平戸太貴(56′-MF48:中野瑠馬)
FW29:奥川雅也(71′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
FW11:マルコ・トゥーリオ・オリヴェイラ・レモス
FW14:原大智(※脳震盪交代 31′-FW93:長沢駿)(64′-FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”)

■横浜F・マリノス(4-2-1-3)
GK19:朴一圭
DF16:加藤蓮
DF13:ジェイソン・エスティベン・キニョーネス・ボティナ
DF22:角田涼太朗
DF25:鈴木冬一(86′-MF6:渡辺皓太)
MF45:コジョ・ジャン・クルード・アジアンベ
MF8:喜田拓也
MF14:植中朝日(90+5′-FW26:ディーン・デイビッド)
FW37:ジョルディ・クルークス(66′-MF20:天野純)
FW48:谷村海那(86′-FW18:オナイウ情滋)
FW17:井上健太(77′-FW30:ユーリ・ナシメント・ヂ・アラウージョ)


終わりのないダンスは続く

冷たい雨が、ピッチと京都に関わる人たちの心を濡らした。

チケット完売で迎えた一戦。
首位に食らいつくには、勝利しか許されない正念場だった。
チームとサポーターが膨らませ続けた「まだ見ぬ景色」への渇望が、スタジアムを熱気で満たす。
しかし、試合終了の笛とともに叩きつけられた現実。
0-3。
アウェイの横浜FMに完敗を喫し、J1初制覇の可能性は完全に消えてしまったのだ。

なぜ、京都は勝てなかったのか?
選手、そして監督が絞り出した言葉の断片に、その答えは散らばっていた。

重くのしかかった「決定力」の差

試合の序盤、流れは決して悪くなかった。
いや、むしろ京都が流れをつかむべきだった。
14分、17分と、奥川雅也が立て続けに相手ゴールキーパーと1対1の決定機を迎える。
だが、いずれも横浜FMの守護神・朴一圭のビッグセーブに阻まれた。

「前半のチャンスで決め切らないと悪い流れが来そうだな、という感じはありました。決めないといけない場面もありました」
試合後、奥川は唇を噛んだ。
決め切れなかったことが、選手たちのマインドに「嫌な予感」として残ったのだろうか。

28分、京都はPKという絶体絶命のピンチを迎える。
だが、ここで守護神・太田岳志が意地を見せた。
キッカーのクルークスに対し、「マルコ(・トゥーリオ)が左を指差していたので、そのフィーリングを信じて」左へ跳び、完璧なストップ。
スタジアムのボルテージは最高潮に達した。

しかし、そのわずか7分後だった。
35分、クルークスのFKから谷村海那に頭で合わされ、先制を許す。

奥川は
「セットプレーはけっこう練習してきていたので、ああいう形でやられるのはもったいなかった」
と肩を落とした。
太田も
「スカウティングで、相手が止まったボールからチャンスをつくっているのはわかっていた。なるべくあの位置でファールをしないようにしようと言っていました」
と、相手のセットプレーを警戒していたことを明かし、
「クルークス選手がああいう場所からでもシュートを狙ってくるという情報があったので、いつもよりゴールに近いポジションを取っていたんです。結果的にそれが(失点という)よくない方向にいったのかな」
と失点の場面を振り返った。
守護神の奮闘でつかみかけた流れを自ら手放してしまったかのような、重い重い被弾だった。

途切れた流れ、目に見えない「何か」

後半、指揮官は動く。
福岡慎平と福田心之助を投入し、「ボールを保持する」方向にアジャストを図った。

確かに、この日の前半は「勝たなければいけない」という意識が強すぎたのか、前線めがけて大きく蹴り出す選択が多かった。
しかし今季の京都は、高い位置からのプレスと素早い切り替えだけでなく、ボールをつなぎながら相手を押し込んでいく「スペース管理」もできるようになってきたはずだ。

「前半を外から見ていて、ボールの落ち着きどころがなかったというか、ボールが跳ね返ってきても全部ロングボールを蹴ってしまって。なかなか自分たちでゲームコントロールができないと感じていました」
「監督から『たくさんボールを受けてほしい』と言われましたし、簡単にロングボールを蹴らずに中盤からつないでいければ、よい攻撃ができるんじゃないかと思いました」

福岡が言うように、後半開始から最初の15分間、ポゼッションは京都が6割近くを握り、何度もペナルティーエリアの周辺に厚みをつくれていた。
50分にはマルコ・トゥーリオのシュートが相手ゴール右隅を急襲もした。

ただ、福岡が「その流れで得点が取れていれば違ったかなと思いますが……」と続けたように、相手の守備をこじ開けるまでには至らなかった。
攻めあぐねる中、72分、そしてアディショナルタイムと、無情にも追加点を奪われてしまう。
特に2失点目以降、チームの勢いは削がれ、ピッチの選手からも覇気が失われたようにも思えた。

宮本優太は、敗因がこの試合だけにあるのではないのだと分析している。
「(前節)鹿島戦の最後のプレーからきょうまでが、ずっとつながっていたんだなと、あらためて自分が情けなかったなということを、振り返って思いますね。鹿島戦で踏ん張れていればチームはもっと勢いづいていただろうし、きょうはまた違うところで意地を見せられたのかな、と」

目に見えるものではない、と前置きしながらも、彼は続けた。
「チームとしての自信や勇気は、あのタイミング(=鹿島戦のロスタイム)で失っちゃったのかなと思います」

優勝争いという、クラブが経験したことのない高み。
長く続いた重圧の中で、チームを支える「何か」が、確かにすり減っていたのかもしれない。
それが、例えばゴール前で身体を投げ出すときの、ほんの一瞬の躊躇になって現れるのだろう。
勝負を分ける「感覚」を、宮本選手は正面から言語化している。

「火を消した」——指揮官の自責

「優勝させられなかった、優勝戦線から脱落してしまった責任は、コーチングスタッフやフロント、選手にはまったくないと思います」
試合後、曺貴裁監督は静かに、しかし強く、自らを責めた。

「きょうは自分の振ったタクトも含めて、非常によくなかった。スタジアムに集まって応援して、期待してもらっている皆さんに向けても、この火を消してしまった責任は大きいなと感じています」
サンガスタジアムができた当時には考えられなかった、チケット完売の状況。
指揮官は「すごく幸せを感じていました」と振り返っただけに、サポーターの期待に応えられなかった無念さは計り知れない。

ただ、監督が自責の念に駆られる一方で、選手たちの胸には新たな渇望が沸き上がっているようだ。
「ここまでよいシーズンを過ごして、よいところまで来ました。これを自分たちのスタンダードにしないといけない」。
そう、奥川は前を向いた。

福岡慎平もまた、「申し訳ない」という言葉を何度も口にしながら、その先を見据えている。
「ことしは当たり前のように2万人前後のサポーターが駆けつけてくれるようになって、本当にありがたいです。今の状態が特別ではなく、毎回これだけのサポーターが足を運んでくれるように、自分たちもそれにふさわしいサッカーをやり続けなきゃいけないと思います」

J1初制覇という夢は、涙雨とともに流れ去った。
しかし、曺監督が語ったように「4チームしか優勝の可能性がない、その中の1チームに自分たちがいた、紛れもない事実」は、京都の歴史に確かに刻まれた。

「最終節のホームゲームの神戸戦に帰ってくるとき、優勝には届かなかったけれど、最後に見る景色を自分たちはどう感じるかを楽しみにしながら、これからの期間をやっていきたいと思います」
指揮官の言葉が、この日の敗戦の意味を物語る。

残り2試合。
彼らがピッチで何を示し、そしてシーズンをどういった形で終えるのか。
今シーズン、京都サンガの周りに広がった「紫の熱気」は、まだ消えてはいない。

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