京都サンガF.C. 0-1 清水エスパルス
日時:2025年9月20日(土)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万9,056人/曇 27℃ 86%)
主審:長峯滉希
※12′-清水/髙橋利樹PK失敗
75′-清水/矢島慎也
■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(77′-MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス)
MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”(46′-MF16:武田将平)
MF39:平戸太貴(71′-MF48:中野瑠馬)
FW14:原大智
FW93:長沢駿(71′-MF27:山田楓喜)
FW18:松田天馬(63′-MF29:奥川雅也)
■清水エスパルス(3-4-2-1)
GK16:梅田透吾
DF4:蓮川壮大
DF24:キム・ミンテ
DF66:住吉ジェラニレショーン
MF28:吉田豊(71′-DF70:高木践)
MF17:弓場将輝(63′-MF21:矢島慎也)
MF98:マテウス・ブエノ・バチスタ
MF14:山原怜音
FW11:中原輝(63′-FW23:北川航也)
FW33:乾貴士(71′-MF8:小塚和季)
FW38:髙橋利樹 (90+2′-FW15:千葉寛汰)
降りかかる灰をかきわけ走るだけ
必然の敗戦だったのかもしれない。
11試合ぶりの黒星を喫し、首位から陥落した。
あらためていうことでもないけど、京都サンガというチームはJリーグでも特異なアイデンティティをもつ。
攻撃時はボール保持に固執せず、自陣でのプレー時間をできれば短縮して、縦に速い攻撃で敵陣に押し入る。
逆に、相手にボールを持たれれば、サイドバックも参加して高い位置でのボール奪取を狙うというハイインテンシティなスタイル。
だからこそ、やりにくいのは「ボールを持たされる」展開だ。
つまり、前半戦の柏レイソルがやってきたこと。
きょうの清水も、ある程度京都にボールを持たせて、狡猾に〝一撃〟のチャンスを狙っていた。
チーム得点王・エリアスの欠場(累積警告)よりも、戦術的な部分が敗因として大きいと感じた。
清水5バックによる「縦封じ」
この日の清水は5バックで守備ブロックを形成。
5枚のディフェンダーで最終ラインの横幅を確保しつつ、中盤の選手がハーフスペースを献身的に埋めることで、京都が最も得意とする「DFラインの裏」への侵入ルートを徹底的に消してきたのだ。
曺貴裁監督も「守備の堅い相手に前半は工夫が足りず、ビルドアップ時の距離も離れてしまった」と振り返ったように、京都は「速く・裏へ」の得意パターンをなかなか出せなかった。
京都の選手たちが自陣でボールを奪っても、パスの出しどころに困るシーンが何度も見られた。
前半のxG(ゴール期待値)=京都0.3・清水0.5というデータが、京都にとってボールは持てどもチャンスが作れなかったことを示している。
ハーフタイムで曺監督は動いた。
「相手が一番嫌がるところにボールを運ばせて、そこで奪い返してから次の攻撃に移る」
との狙いから、ボールの引き出し方に長けた武田将平を投入。
60分には宮本優太の縦パスから原大智がシュートを放つ場面が生まれるなど、京都は攻撃の迫力を取り戻す。
最終的なシュート数は京都16本、清水7本。
数字の上では京都が攻め続けたことは明白だ。
だがその内訳は、枠内シュートが京都3本に対し清水5本。
京都の攻撃は決定機創出にまでは至らず、逆に清水は少ないチャンスを効率的に得点に結びつけた。
曺監督も「清水さんのゴール前で体を張った守備をこじ開けられなかった。堅い守備を称賛するしかない」と試合を総括している。
一瞬の「エアポケット」
失点場面を振り返ると、攻勢を強める中で一瞬の守備の隙を突かれたものだった。
福岡慎平がパスをカットして前進しようとした際にトラップが大きくなり、相手のボディコンタクトによってボールを失う。
そして相手のパス交換に目線を奪われ、高木にポケットに侵入され、最後は中盤から遅れてゴール前に入ってきた矢島をフリーにしてしまった。
清水の秋葉忠宏監督は「練習で繰り返した崩しを選手が体現した」と語り、矢島自身も「ゴール前へ入っていくのはチームの狙い」と説明している通り、相手にとって「狙っていた」ゴールを決められたのだ。
武田将平は「(福岡)慎平のところでイレギュラーなところがあったので、矢島に(マークに)ついていくべきだった」と悔やんだが、この失点は個人の責任ではなく、チーム全体の守備の問題から生まれたものだろう。
京都の守備はボールサイドに圧力を集中させるが、その副作用として逆サイドや中央バイタルエリアのカバーが薄くなる。
特に、アンカー・福岡の脇のスペースは相手が狙ってくるところ。
失点シーンも、パスカットで一瞬前がかりになったところでボールを失い、中央スペースの管理が甘くなったことが決定打となった。
「強いチーム」に必要なもの
原大智は「大きな戦力を欠いた試合で、これも自分たちの実力だと思う」と語った。
確かに、エリアスの不在は痛かった。
だが本質的な問題は、京都が得意とする〝オープンな展開でのトランジション勝負〟に相手を巻き込めなかったとき、代替策=「プランB」を持ち得なかったことではないだろうか。
タイトルを争うチームならば、あらゆるスタイルの挑戦を退けなければならない。
アグレッシブなスタイルを維持しつつも、相手がブロックを敷いたときにどう崩すか。
バイタルエリアの管理など、守備の秩序をどう保ち続けるか。
この課題を克服できるかどうかが、京都が本当に上位に値するチームたりうるかの試金石になる。
今季の強さはフロックなのか、本物なのか。
残り試合で真価が問われる。