【J1第31節】京都サンガF.C. 1-1 FC町田ゼルビア

京都サンガF.C. 1-1 FC町田ゼルビア
日時:2025年9月23日(火)19:03KO
会場:京都府立京都スタジアム “サンガS”(1万8,964人/曇 24.8℃ 64%)
主審:飯田淳平
16′-町田/岡村大八
※74′-ハファエウ・エリアスPK失敗
90+3′-京都/原大智(pen.)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF2:福田心之助
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF22:須貝英大(85′-MF44:佐藤響)
MF16:武田将平(85′-FW93:長沢駿)
MF6:ジョアン・ペドロ・メンデス・サントス(67′-MF39:平戸太貴)
MF48:中野瑠馬(85′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
FW29:奥川雅也(56′-MF27:山田楓喜)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”
FW14:原大智

■FC町田ゼルビア(3-4-2-1)
GK1:谷晃生
DF5:イブラヒム・ドレシェヴィッチ
DF50:岡村大八(62′-MF18:下田北斗)
DF3:昌子源
MF6:望月ヘンリー海輝
MF16:前寛之(89′-MF23:白崎凌兵)
MF19:中山雄太
MF26:林幸多郎
FW20:西村拓真(75′-FW10:ナ・サンホ)
FW7:相馬勇紀(75′-FW22:沼田駿也)
FW9:藤尾翔太 (75′-FW15:ミッチェル・デューク)

絶望と歓喜のカタルシス

首位返り咲きを狙うには、勝ちたかったホームゲームだった。
結果は勝ち点1。
とはいえ、決して悲観する内容ではなかった。

ターンオーバーと若き才能の躍動

清水戦の敗戦から中2日。
曺貴裁監督は動いた。
先発6人を入れ替え、特に中盤3人は前節から総入れ替えの布陣を敷く。
その意図として指揮官は「最近、試合の入りで、ボールを取られても後ろの選手が対応してくれるだろうという雰囲気が気になっていた」ことを挙げた。

アグレッシブさへの渇望。
それは、ピッチで躍動する若き才能によって確かな熱を帯びていく。
J1初先発となる大卒ルーキー・中野瑠馬は、指揮官が「1人名前を挙げるならば」と自ら切り出して、「前への推進力と運動量が落ちず、非常に頼もしかった」と絶賛するほどの輝きを放った。
身長169cmの小さな身体でピッチを縦横無尽に駆け回り、セットプレーのキッカーも任される。
前半27分には強烈なミドルシュートで相手ゴールを脅かした。
本人は「チャンスが来ると思って、準備していた」と静かに語ったが、間違いなくきょうの試合で京都を牽引したひとりだった。

エースの責任感

試合の主導権を握りながらも、前半16分、町田得意のロングスローからの一瞬の隙を突かれ、先制を許す。
ビハインドを背負ったまま迎えた後半、京都はさらに攻勢を強めた。
そして74分、ついに決定機が訪れる。
左サイドバックの須貝英大がエリア内で倒され、PKを獲得したのだ。

キッカーは、絶対的エース・エリアス。
誰もが同点を確信した瞬間、キックはGK谷晃生のファインセーブに阻まれてしまった。
膝から崩れ落ちる背番号9。
スタジアムに響き渡る悲鳴とため息。
試合終了後、エリアスは「自分がすべての責任を取りたい」と、誠意と責任感に満ちあふれたコメントを発している。

託された想いと〝強心臓〟

時間は無情にも過ぎていく。
連敗の2文字が、サポーターたちの脳裏を支配しかけていた。
だが、曺監督が「こんなに仲のよいチームは見たことがない」と評する絆が、土壇場で奇跡を呼び起こす。

後半アディショナルタイム、途中出場の佐藤響が再びエリア内で倒され、きょう2度目のPKを獲得。
ボールのもとに選手たちが集まる。
福田心之助はエリアスにもう一度蹴ってほしいと願っていた。
だが、エリアスは個人の「名誉回復」よりも、チームの勝利を選んだ。
「いや、きょうは俺じゃない、(原大智に)任せたい」。
彼は原大智の肩を叩き、ボールを託した。

「自分としても蹴りたかったし、(一度PKを止められている)プレッシャーは特になかったです」と、試合後飄々と語った原大智。
「ハファの思いも込めて蹴りました」という右足から放たれたボールは、GKの逆を突き、ゴールネットに突き刺さった。
歓喜の爆発。
それは、単なる同点ゴールではなかった。
チーム全員で掴み取った魂の一撃だった。

さらに、試合は終わらない。
ラストプレー、ゴール正面で得たFK。
キッカーの山田楓喜は「決められる自信があったので、俺が蹴るしかないと思った」と振り返る。
左足から放たれた完璧な軌道のシュートは、しかし無情にもクロスバーを直撃。
劇的な逆転勝利は、ほんの数センチの差でこぼれ落ちた。

勝ち点1の意味

試合後、山田は「勝点2を落としたって感じが強い」と悔しさを滲ませた。
だが、敵将の言葉が、この引き分けの価値を物語っていた。
「本当に悔しい。ただ、京都さんも素晴らしいチームで、我々が勝点3を取るに値するようなゲーム内容だったのかと言われれば、やはり1-1が妥当だったのかなという思いもあります」(黒田剛監督)。
最後まで攻め続けた京都の執念が、相手にそう認めさせたのだ。

京都の曺貴裁監督の見方も、選手たちの悔しさとは少し違った。
「想像以上によく走ってくれた。自分たちらしい試合」。
中2日の相手を走行距離で圧倒し、最後まで攻め続けた姿勢。
そこに、敗戦を引きずらない選手たちの、確かな成長を見ていた。
「間違いなく上に行くための素地はできてきている」。

絶望的なPK失敗から、チームの絆で掴んだ劇的な同点劇。
そして、最後の最後に訪れた逆転の好機。
喜び、安堵、そして強烈な悔しさ。
そのすべてを味わい尽くしたドローゲームは、アウェイの町田戦同様ドラマチックな内容だった。
残り7試合。
初の栄冠に向けた紫の戦士たちの物語は、この夜またひとつ、忘れられないチャプターを刻んだ。
試合後サポーターからチームに送られた大声援が、その証左だった。

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