サンフレッチェ広島 1-1 京都サンガF.C.
日時:2025年9月12日(金)19:03KO
会場:広島県広島市広島サッカースタジアム “Eピース”(2万5,369人/曇 28.4℃ 78%)
主審:木村博之
63′-広島/佐々木翔
88′-京都/ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”(左足←マルコ・トゥーリオ)

■サンフレッチェ広島(3-4-2-1)
GK1:大迫敬介
DF33:塩谷司
DF3:山﨑大地
DF19:佐々木翔
MF15:中野就斗
MF14:田中聡
MF35:中島洋太朗(90+1′-DF4:荒木隼人)
MF24:東俊希(90+1′-MF13:新井直人)
FW41:前田直輝(46′-FW17:木下康介)
FW51:加藤陸次樹(61′-FW98:ヴァレール・ジェルマン)
FW9:ジャーメイン良(86′-MF6:川辺駿)

■京都サンガF.C.(4-1-2-3)
GK26:太田岳志
DF22:須貝英大(56′-DF2:福田心之助)
DF24:宮本優太
DF50:鈴木義宜
DF44:佐藤響
MF10:福岡慎平(75′-MF48:中野瑠馬)
MF16:武田将平(56′-MF25:レオナルド・ダ・シウヴァ・ゴメス “レオ・ゴメス”)
MF39:平戸太貴(72′-FW11:マルコ・トゥーリオ・オリヴェイラ・レモス)
FW27:山田楓喜(46′-MF29:奥川雅也)
FW9:ハファエウ・エリアス・ダ・シウヴァ “パパガイオ”
FW14:原大智

たとえどんな敵が相手でも

「ただ、ゴールが決まらなかった。それだけだ」
広島の指揮官・ミヒャエル・スキッベは試合を振り返って、そう繰り返した。
確かにスタッツだけを見れば、ホームチームの圧勝だったはずだ。
シュート数は広島21本に対して京都はわずか5本。
ゴール期待値は2.91対0.41(※Jリーグ公式サイトテキスト速報より)。
ボールは終始広島が支配し、首位・京都を自陣深くに押し込んだ。

しかし、最終的にスコアボードに刻まれた数字は「1-1」。
最後に〝笑った〟のは、耐えに耐えた末に貴重な勝ち点1をもぎ取った京都だったかもしれない。

今季の自信がもたらした〝負けないメンタリティ〟

「ゲームとしてはホームの声援を受けた広島さんのゲームだったと思います」
京都の曺貴裁監督は潔く認めた。

この日の広島の強さは、攻守一体となったプレッシングにあった。
「前半は自分たちがボールを持ったときの〝出口〟の共有がうまくいかなくて、連続攻撃をくらう場面がありました」
曺監督が認めた通り、京都は後方からボールを繋ごうとしても、広島の素早い囲い込みによって自由を奪われ、苦し紛れのロングボールを蹴らされる場面が散見された。

さらに、広島の選手たちが「このピッチに慣れていて五分五分のボールを味方につけるプレーが多かった」(曺監督)こともあり、セカンドボールへの反応でも京都を圧倒。
中盤でボールを回収しては素早くサイドに展開し、厚みのある攻撃を繰り返した。
受け身に回った京都は自陣でのブロック形成を余儀なくされ、攻撃の糸口をまったく掴めないまま時間が過ぎていく。

後半18分、ついに広島が均衡を破る。
猛攻の中から生まれたこぼれ球をDF佐々木翔が押し込み、ホームのサポーターは歓喜に沸いた。
しかし、その後も圧倒的優位に立ちながら追加点を奪えないことが、徐々に重圧となってのしかかる。

対する京都は、劣勢を自覚したうえで現実的な戦い方を選択した。
「0-1にされても2点目を取られなければ、どこかで流れが来るという典型的な試合だったと思います」と曺監督が語ったように、いつか追いつけるというメンタリティがチームに通底していた。
宮本優太も失点直後に「みんなで集まって『1失点に抑えよう!』という話をしました」と明かす。
試合内容では劣っていても、勝点を拾うためのゲームプランを遂行し続けたのだ。
また、相手の運動量が落ちてきたことと「相手ダブルボランチの背中で起点を作り、サイドで人数をかけた」(曺監督)ことで、ボールが持てる時間も増えていった。

一瞬の隙を見逃さない〝個のクオリティ〟

そして、ドラマが生まれた。
後半43分、この試合が負傷からの復帰戦だったマルコ・トゥーリオが、右サイドからグラウンダーのクロスを供給。
これに反応したのが、エースのラファエル・エリアスだ。
三浦知良の記録を塗り替えるクラブ新記録の5試合連続ゴールであり、得点ランキング単独トップに立つ今季16点目。

ゴール後は、娘に向けた〝アンパンマン・パフォーマンス〟を見せたエリアス。
「ディフェンダーは自分の左足をしっかりと防いでくるだろうなというイメージはできていた。うまく回転できて相手の股を通したシュートが打てて、キーパーが動いた逆を取ることができた」と得点シーンを振り返った。
相手の動きを予測し、一瞬の判断でDFの股を抜き、GKの逆を突く。
組織的な守備網を閃きで破壊する、まさにワールドクラスの一撃だった。
「ああいうシュートは練習の中でもよく打っている」という言葉通り、偶然ではない〝準備された技術〟が劣勢のチームを救った。

一方、広島としてはディフェンスラインはおおむね整っていたものの、右サイドでのマルコの抜け出し、そしてグラウンダーパスへの対応が一瞬後手になったことが命取りになった。
GK大迫敬介が「前後半を通して決定的なピンチはなくて、失点したシーンだけだった」と言うように、たった1回のミスを悔やんでも悔やみきれない格好だろう。

5年間の成長がもたらした勝ち点1

「スキッベ監督にしてみたら勝点2を落としたという試合だったと思いますけども、われわれとしては拾ったというよりも、普段やってることがそのまま出て勝ち点1を獲得した試合になった」という曺監督の言葉が、この試合の本質を突いていた。

このドローで京都はクラブのJ1新記録となる「10試合負けなし」を達成し、首位の座を堅守した。
圧倒的に攻めながら勝ち点2を失った広島と、耐え抜いて勝ち点1を掴み取った京都。
試合内容と結果は相関しない——サッカーでよくある結果と言ってしまえばそれだけだが、京都が勝ち点1を取れたことはチームの成長だと評価していいだろう。

最後は、曺さんのコメントで締めておく。
「劣勢の中でメンタル的に最後まで切れずに1点を取った、追いついた。そして、あわよくばカウンターで最後取れそうな場面もありました。そういう戦い方を精神的に切れないでできるということは、(監督就任以来)5年間やった中での選手の成長だと思います」

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください