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書籍小説のアーカイブ
花村萬月「二進法の犬」(*****)
- 2011 年 1 月 19 日 12:00 AM
- 書籍小説
■二進法(カッパ・ノベルス)
さぁ、花村萬月の超ロング長編だ。
10年ほど前に読んで大衝撃を受けた一冊。
いつか読み直そう読み直そうと思って、月日が経った。
ついに、正月休みに読み直した。
いや、やっぱりすげぇわ。
ストーリーは——。
就職した会社もあっさり辞め、家庭教師として生計を立てる主人公・鷲津兵輔。
彼は「武闘派ヤクザ」の組長のひとり娘で女子高校生の、倫子を教えることになる。
美しい彼女と、ヤクザ組長の人間性に惹かれていく鷲津。
やがて、今までの単調な生活をぶち壊すような、大きな出来事に巻き込まれていく。
この本。
テレ朝のサッカーファン&ショートカット眼鏡女王・萩野志保子アナは絶賛。
山形浩生さんはゴミ箱に捨てるほどの大激怒。
毀誉褒貶ある大作だったりする。
たしかに、けなされる理由は分かる。
作者が投影されたであろう主人公に、都合のいい展開が続く。
ヒロインは、そんな男を好きになって、無条件に受け入れてくれるというありがたさ。
そして、登場人物が、あらすじとは関係ない倫理観など長々と語り出す場面、あまた。
カタチとしては、不格好なのだ。
とはいえ、人間の情けなさとか、男の弱さとかをこれだけ開けっぴろげに書かれている本は、少ない。
ご都合的とは言われようが、これだけドラマチックなエピソードが連続する小説も、少ない。
ひと晩を通しての、バクチのシーン。
主人公とヒロインが、はじめて結ばれるシーン。
ラスト間際の、凄惨なシーン。
読んでいて、心にズンと響いてくる感じだ。
おれが読んだノベルス版は、「京極本」並みの分厚さはあるが、読みはじめてノッてくれば、いつまでも読み続けていられそう。
文庫版も出ている。
あと、電子書籍版も出てるから、Sony Readerでも読める。
■二進法の犬
■二進法の犬|著:花村萬月|ビットウェイブックス
デビュー後の青春小説は「第一期花村萬月」。
暴力と性を描き続けた「第二期花村萬月」。
と、するならば。
本書は、作者を投影された登場人物が韜晦を続けつつ物語が進む「第三期花村萬月」の代表作だろう、
その後、「ゲルマニウムの夜」での純文学の「第四期」を経て、今は…ようわからん。
※参考
■萩野志保子
好きな映画、または本は何ですか?
…
本:『沈黙』遠藤周作
『二進法の犬』花村萬月
『ハゴロモ』よしもとばなな
ラオスから朝返ってその日のうちにモロッコに向かう久々の強行軍。機内ではしばらく前に古本屋の百円コーナーで買ってあった花村萬月『二進法の犬』を読むが……。千六百枚だそうだけど、ものの二時間ほどで読了するほどのスカスカぶりに激怒。こんなもんに少ない機内持ち込み荷物の容積と重量を占拠させたとは! 場面の展開も、そこでの心理も、その行動や心理が小説の中で哲学・思想的に持つはずの意味も、とにかくありとあらゆることを無能な主人公(しかも著者は自分で書いておきながらその主人公の無能ぶりを理解していない模様)のくだらない蘊蓄開陳で解説させる話の展開のへたくそさ。さらにはその蘊蓄自体の、どっかの通俗解説書を孫引きしてきたかのような耐え難い底の浅さ(冒頭のフォン・ノイマン話とか、ラスト近くの虚無がどうしたとか)。風景や背景は皆無で、あらゆる場面の舞台の描写は、「ファミレス」とか「ラブホテルみたいな」とかいう形容一言ですませてしまい、目先のガジェットのカタログスペック以外にはその場面自体の具体像が何もない中で、登場人物たちがひたすらおしゃべりするだけ。キャラもプロットも、深まりも展開も一切なくてだらだら流れていくだけ。小説にもなってねえよ。……(2009/5/30, id)
藤沢周平「用心棒日月抄」(***)
- 2011 年 1 月 4 日 11:00 PM
- 書籍小説
■用心棒日月抄 (新潮文庫)
2010年は、本のことについてブログを書かなかった。
過去に手にした本を、また読んでいたことが多かったからだ。
そして、昔書いたブログの文章を見返すと。
「読み方が浅かった」
「そんなところがツボだったのか」
と、われながら驚くことも多かった。
自分の言ってることは、一貫性のない、いい加減なものである。
そう、しみじみと感じたのだった。
さて、2011年に最初に読んだのは、藤沢周平の名シリーズ。
これは、藤沢ワールドの中でも、読んだことのなかった。
なんだか、シリーズものだと、身構えてしまって、なかなか手が付けられなかったりするよね。
舞台は元禄江戸時代。
藩内の権力抗争に巻き込まれた主人公・青江又八郎は、江戸へ向かう。
脱藩者として当座、剣の腕をいかして用心棒として生きていくことにしたのだ。
連作短編となっていて、毎回「用心棒仕事」をめぐって事件が起きるという仕組み。
おお、wikipediaにも説明があった。
■用心棒日月抄 – Wikipedia
藤沢周平といえば人情モノが好きなんですが、これは剣術モノ。
とはいえ、コミカルな要素もあったり、ちょっとしたロマンスもあったり。
広く読みやすい内容だった。
むか〜しNHKで見た、村上弘明主演の「腕におぼえあり」は、このシリーズが下敷きだったのか。
なるほど。
デニス・ジョンソン「ジーザス・サン」(***)
- 2010 年 8 月 31 日 10:00 PM
- 書籍小説
■ジーザス・サン (エクス・リブリス)
ジミ・ヘンドリクスのギターに影響を受けて文章を書きはじめたという、ミュンヘン生まれのデニス・ジョンソン。
彼の出世作であるこの短編集は、自身が「ジャンキー」だった経験を生かしてか、完全にヤバい人たちの生き様を描いている。
酒を飲んで、ドラッグをやる。
銃を撃つ、人を殺す。
そんな描写が、淡々と続く。
村上春樹の「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど」にて並列で紹介されている関係で、どうしてもトム・ジョーンズの小説と比較してしまう。
トム・ジョーンズの登場人物は「神経症」だが、デニス・ジョンソンの登場人物は「ジャンキー」。
その違いはあるけど、人生をあっけなく生きている人を描いているという意味で似ているのは間違いない。
●いっしょにいた連中は、みんな俺たちの仲間だったが、ときとりポケットミラーを奴の鼻の下にあてては、鏡にちゃんと細かいもやが浮かぶことを確かめた。ところが、そのうちに奴らは彼のことを忘れてしまい、誰も気づかないうちに呼吸が止まった。奴はあっさり息絶えた。奴は死んだ。
俺はまだ生きてる。50p(「保釈中」より)
●俺が24歳の誕生日、2人で喧嘩していたとき、ミシェルはキッチンを出て、ピストルを持って戻ってきて、テーブルの向こう側から俺めがけて5発撃った。でも弾は当たらなかった。彼女が求めていたのは俺の命じゃなかった。もっとそれ以上のものだった。俺の心臓を喰らって自分の為した行ないを抱えて砂漠に埋もれることを彼女は欲した。ひざまずいてその行ないから生を生み出すことを彼女は欲した。子供が母親によってのみ傷つけられうるやり方で俺を傷つけることを彼女は欲した。114p(「ダーティ・ウェディング」)
佐々木譲「笑う警官」(**)
- 2010 年 8 月 13 日 5:00 PM
- 書籍小説
■笑う警官 (ハルキ文庫)
(以下、ネタバレを含みます)
映画化もされた、ベストセラー。
だが、ちょっと「ううーん」って言いたくなる内容だった。
個人的に、いちばん違和感を感じたのが、殺人事件の動機なのだ。
●いい年したおっちゃん(警視庁キャリア、北海道県警に出向中)が、短大卒の美人女性警官とデキてしまう。
●制服を着た女性警官に、手錠とかで拘束されながらセックスするのが好きで、それを求める。
●女性の方が、セックス面でも(ハプニングバーに行こうとか)、金銭面でも(東京に店を持たせろとか)要求がエスカレートしてきた。
●ちょうど、女性が空き巣に出くわして殴られ気を失っているのを見て、おっちゃんが
「いいチャンスだ」
と思って、彼女の首を折る。
うーん…。
テレビの2時間サスペンスドラマぽさが漂う。
ほかにも、濡れ衣を着せられた警官を匿っているが彼の身にほとんど危機が迫らない、そもそも主人公たちに敵対するグループが描かれてないためサスペンス感が薄い、など突っ込みたくなるところはあるんだけどね。
展開はスピーディなんだけど、どこか物足りなさを感じる一作だった。
★「水村は、何を要求したんです?」
「セックスの奴隷となれということだ」石岡の声には、張りがなかった。疲れ切った男の声だった。「ハプニングバーに連れてゆけ、三人プレイがしたいと、どんどん要求が過激になっていった。そして、わたしの赴任地には自分も必ず付いてゆく、と言うんだ。最後は東京が望みだという。六本木でも赤坂でもいい、お店を持たせてくれと言うんだ。裏金で、それができるはずだと」
佐伯は、水村朝美の父親が警察官であったことを思い出した。ひと昔前の警察官には、権威主義的な男が多かった。娘を時代錯誤と言えるほどの厳しい戒律で育てるのがふつうだった。警察官のあいだでは、よく言われている。模範的な警官の娘は、なぜか跳んでしまう。性的に暴走する女は、案外父親が警官だったというケースが多いのだ、と。水村朝美も、例外ではないのか。
391〜392p
舞城王太郎「獣の樹」(****)
- 2010 年 7 月 10 日 10:00 PM
- 書籍小説
■獣の樹 (講談社ノベルス マG-8)
◇出版社HPより:ある日ある朝、西暁町で、12歳くらいの僕が馬から生まれる。
記憶も名前もない。
でも名前なんかいらない、と僕は思う。
自分が誰だってどうでもいい……のに、正彦が僕を弟にする。
それからヒトとしての生活にようやく馴れてきたところに蛇に乗る少女・楡(にれ)が現れ、僕を殺人現場に誘う。
冒険が始まる。
失踪した父親。
地下密室。
獣の大革命。
そして恋。
混乱と騒動の中、僕は暗い森を駆ける駆ける駆け抜けていく。
舞城王太郎が講談社ノベルスに舞い戻り投下する、新しい小説(テロリズム)!
■前置き
舞城作品には、ミステリの風味がまぶされた作品群と、文学の匂いが強い作品群の両方がある。前者に属するものとして、デビュー作の「煙か土か食い物」、第二作の「暗闇の中で子供」などが挙げられる。
それらに共通する特徴としては…。
・残虐な形で人の死ぬ/死体が出てくる
・殺人の意図として「見立て」がある
などがあるんじゃないかな。
見立て…っていうのは、まぁ死体が躰の一部を見せるように埋められていて、その並べ方に犯人の意図があるというようなことで、Wikipedeiaにもほぉらこうして項目が割かれているね。
■見立て – Wikipedia
■■見立て殺人 – Wikipedia
一方、後者の「文学臭作品グループ」は、人が死んじゃったり殺し合いが起きたりはするものの、あまりその謎を解くというくだりはなく、むしろ人の死に直面したシーンを描かれることに意味があるっつーか。
ワタクシが、舞城作品のなかでもっともフェバリットなもののひとつである「山ん中の獅見朋成雄」とか、あとは直木賞候補作「阿修羅ガール」などが、これらの作品群に属する。
■で、本作は?
ということで、本作は前者のテイストが強い作品だった。でも、主人公は、「山ん中の獅見朋成雄」「SPEEDBOY!」と同様、超人的な身体能力と走力を持つ成雄くんなのだ。
登場人物は「成雄シリーズ」のようでいて、見立て殺人、親子の血縁問題…など「煙か土か食い物」「暗闇の中で子供」的なテーマが描かれるという。
そういう意味で、ハイブリッドな作品なのか。
ストーリー的には、馬の子宮から出てきた少年・成雄が、まったく記憶のないまま、自分の親は誰なのか?を探る自分探しの物語。
そして、蛇の口に入って移動する少女=ファム・ファタールとの恋愛劇。
そして、見立て殺人。
そして、遺伝子工学!?
…、内容の方も、いろんな要素のハイブリッドって感じで、それが独特の疾走感ある文体で綴られている。
荒唐無稽でありながら、切迫感があって、個人的にはすごく楽しめた。
というか、こんな分厚いのに、電車や喫茶店で読み込んで4日間で読み切れた。
没入できた。
ちょっと、また、旧作を読み返してみようかな。
★なのに正彦になしきサボロッカ牧場の事件の話をしてしまうと、僕はうまく走れなくなってくる。まだ全然他のヒトよりは速いが、以前は風を追い抜くことだってできたのに、今は何だか足が重くて骨とか肉とかが僕にぶつぶつ不満を言っているような気がしている。「おいおい成雄よ、お前いつまで馬みたいなふりし続けるんだよ?」。僕の手足も骨も背骨も正しい。僕は僕を騙しているのだ。そしてそれに気がついてしまっている。……151p
※過去ログ
■舞城王太郎「ビッチマグネット」@新潮2009年9月号(***) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「みんな元気。」(**) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「SPEEDBOY!(スピードボーイ!)」(****) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」(***) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「山ん中の獅見朋成雄」(****) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「九十九十九」(***) – Sex & Books & Football
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