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馳星周「ブルーローズ(上)・(下)」(***)

ブルー・ローズ〈上〉 (中公文庫)
ブルー・ローズ〈上〉 (中公文庫)

ブルー・ローズ〈下〉 (中公文庫)
ブルー・ローズ〈下〉 (中公文庫)

◇内容(「BOOK」データベースより)
<上巻>優雅なセレブたちの秘密に踏み込んだ元刑事。身も心も苛む、背徳の官能と、腐敗した正義。青い薔薇―それは、ありえない現実。
<下巻>失踪した井口警視監の娘の捜索を進めるうちに「ブルー・ローズ」の秘密を知った元刑事の徳永。上級警察官僚、大物政治家をも巻き込む巨大な暗闘、徳永を嘲笑うかのように立ちはだかる公安警察の巨大な壁―。際限なく膨張し続ける人々の欲望を前に、ついに徳永のモラルが吹き飛ぶ!人間の性と暴力衝動が炸裂する、馴ノワール新たなる傑作長篇。


「不夜城」ほか初期作品は好きだったんだけど、エルロイ的文体から離れ、ストーリーも好みじゃなくなって、めっきり追いかけなくなった馳星周氏。
先日、ひょんなことから名作「漂流街」を再読した。
んで、やっぱりおもしろいなと思って、文庫になっている作品の中からこれを読んでみた。
上巻は、抑制の効いたハードボイルド。
下巻は、復讐劇。
主人公が復讐に走った理由が「一目惚れ」ってのが、ちょっと弱いというか、納得できないと感じる部分もあるが…。
ただ、そうしたディテールを無視すれば、特に下巻のスピード感はすばらしい。

ちょっと思ったのが、ラストのほうの「暴走する主人公」の描写が志水辰夫大先生っぽいことだ。
たとえば、次のくだりなど、完全に「裂けて海峡」っぽい。

★わたしも同じだ。
呼吸が荒く、膝が笑っている。
息を止め、銃を構えた。
わたしはひとつの意志だ。
揺らぐことのない決意だ。
憎悪に凝り固まった塊だ。
肉体など、ただの付属物に過ぎない。252p

宮木あや子「花宵道中」(***)

花宵道中 (新潮文庫)
花宵道中 (新潮文庫)

◇内容(「BOOK」データベースより):どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。あの日、あんたに逢うまでは―初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑…儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R‐18文学賞受賞作

ことしの「夏の100冊」にラインアップされていて、偶然手に取ったのだが、こりゃおもしろい。
吉原の遊廓で働く「遊女たち」を主人公にした連絡短編集。
吉原に売られてきた運命、そこから出られない宿命。
そんな中でけなげに生きる、女の心意気。
…って感じか。
エロ的要素は薄いので、そっち方面は期待しないほうがいい。

志水辰夫「夜去り川」(****)

夜去り川
夜去り川

いま時代小説に専念している志水辰夫大先生の最新作。
うっかりしていて発売しているのを知らなかった。
書店で発見して購入する。

久しぶりの書き下ろし長編。
読み終えてひとこと…いい!
時代小説シリーズではいちばん好みだな。

主人公は、もともと侍でありながら、とある土地で「川の渡し」をしている男。
彼がその地にいるのは、ある目的があった…。
謎めいた目的をもつ主人公。
Wヒロイン。
主人公を手助けする、口の悪いが心優しい老人。
おお、これは昔読んだ「シミタツ小説」に共通するものがあるではないか。

また、以下のようなくだり、登場人物がいまの自分がおかれた境遇を自嘲するのも、そういえばどこかで読んだような…。

●「……働けば稼げるから、みなそれを目当てに、一生懸命働いている。
いまはもうそういう時代なんだ。
だが侍は、その仕組みに与っていない。
金のことを言うのは卑しいという、百年も二百年も前の理屈にしがみついて、実際にやっていることと行ったら、民百姓からかすりを取っているだけ。……」(128p)


主人公の目的が明らかになるのが中盤になってからだったり、ラストが駆け足だったり。
構成的にはちょっと気になるところがあるんだけれど。
それは、おそらく主人公の「目的達成」がこの小説の主軸ではなくて、主人公と土地の人たちの交流が軸であるからだろう。
時間を置いてまた読み返してみたい一冊。
そのときは、あらすじがある程度わかっているだけに、気になる箇所も変わってくるに違いない。


だから時代小説を書く:文藝春秋|雑誌|本の話|PICK UP

樋口毅宏「テロルのすべて」(**)

テロルのすべて
テロルのすべて


待望の新作。
レビューサボってたんですが、著者の本はいちおう全部読んでます。
で、感想をワンフレーズでいうならば、
「あ、あれ…?」
かな。

いままでは
「言いたいこと」×「荒唐無稽なストーリー」=ごった煮
がおもしろかったんだけど、今作はページ数が少ないせいか、
「言いたいこと」のためにストーリーがある
ように読めてしまったのだ。
思想色が強すぎて、ちょっと読者、置いてけぼりな感じもある。
きっといろんなサイドストーリー交えつつ、もっと長編にしたら、著者らしいぶっ飛んだモノになるんだろうなぁ、惜しい…って上から目線すぎるか。

やっぱり、マイベストは「日本のセックス」っすね。
日本のセックス
日本のセックス

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日〈上・中・下〉 」(***)

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)
ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)
ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)
ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)

だめだ!(笑)。
見立て合戦の途中から、トリックの「意味」がわからなくなった。
暴れ馬から落ちないように必死ですがりつくがごとく、筋だけ追ってなんとか読了。
なんかすごい。
けど、結局よくわらかない。

★「でも見つけられませんでした。
時を超えることのできる三田村さんですから、梢ちゃんのそばでずっと監視していたんです。
空間の外で。
けれど梢ちゃんはずっと無事でした。
でも梢ちゃんは襲われてしまった。
つまり、梢ちゃんの時間は編集されてしまったんです。
実際の暴行の時間だけ切り取られ、つながれてしまったんです。
……(中略)……
時間を直接いじるには、きっと時間枠を超えるだけじゃなくて、完全に時間の外側に行かなくては駄目なんでしょう」中巻444p


★ふざけてなないでお前が何とかしろよと水星Cをにらみつけようとしたとき、俺の前に《俺》が現れる。
もう一人の《俺》だ。
ドッペルゲンガーなんかじゃない。分身なんかじゃない。《俺》に記憶がないんだから、《未来の俺》なんだろう。下巻195p

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