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デニス・ジョンソン「ジーザス・サン」(***)

ジーザス・サン (エクス・リブリス)
ジーザス・サン (エクス・リブリス)

ジミ・ヘンドリクスのギターに影響を受けて文章を書きはじめたという、ミュンヘン生まれのデニス・ジョンソン。
彼の出世作であるこの短編集は、自身が「ジャンキー」だった経験を生かしてか、完全にヤバい人たちの生き様を描いている。

酒を飲んで、ドラッグをやる。
銃を撃つ、人を殺す。
そんな描写が、淡々と続く。


村上春樹の「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど」にて並列で紹介されている関係で、どうしてもトム・ジョーンズの小説と比較してしまう。
トム・ジョーンズの登場人物は「神経症」だが、デニス・ジョンソンの登場人物は「ジャンキー」。
その違いはあるけど、人生をあっけなく生きている人を描いているという意味で似ているのは間違いない。

●いっしょにいた連中は、みんな俺たちの仲間だったが、ときとりポケットミラーを奴の鼻の下にあてては、鏡にちゃんと細かいもやが浮かぶことを確かめた。ところが、そのうちに奴らは彼のことを忘れてしまい、誰も気づかないうちに呼吸が止まった。奴はあっさり息絶えた。奴は死んだ。
俺はまだ生きてる。50p(「保釈中」より)

●俺が24歳の誕生日、2人で喧嘩していたとき、ミシェルはキッチンを出て、ピストルを持って戻ってきて、テーブルの向こう側から俺めがけて5発撃った。でも弾は当たらなかった。彼女が求めていたのは俺の命じゃなかった。もっとそれ以上のものだった。俺の心臓を喰らって自分の為した行ないを抱えて砂漠に埋もれることを彼女は欲した。ひざまずいてその行ないから生を生み出すことを彼女は欲した。子供が母親によってのみ傷つけられうるやり方で俺を傷つけることを彼女は欲した。114p(「ダーティ・ウェディング」)

佐々木譲「笑う警官」(**)

笑う警官 (ハルキ文庫)
笑う警官 (ハルキ文庫)

(以下、ネタバレを含みます)
映画化もされた、ベストセラー。
だが、ちょっと「ううーん」って言いたくなる内容だった。

個人的に、いちばん違和感を感じたのが、殺人事件の動機なのだ。
●いい年したおっちゃん(警視庁キャリア、北海道県警に出向中)が、短大卒の美人女性警官とデキてしまう。
●制服を着た女性警官に、手錠とかで拘束されながらセックスするのが好きで、それを求める。
●女性の方が、セックス面でも(ハプニングバーに行こうとか)、金銭面でも(東京に店を持たせろとか)要求がエスカレートしてきた。
●ちょうど、女性が空き巣に出くわして殴られ気を失っているのを見て、おっちゃんが
「いいチャンスだ」
と思って、彼女の首を折る。

うーん…。
テレビの2時間サスペンスドラマぽさが漂う。
ほかにも、濡れ衣を着せられた警官を匿っているが彼の身にほとんど危機が迫らない、そもそも主人公たちに敵対するグループが描かれてないためサスペンス感が薄い、など突っ込みたくなるところはあるんだけどね。
展開はスピーディなんだけど、どこか物足りなさを感じる一作だった。

★「水村は、何を要求したんです?」
「セックスの奴隷となれということだ」石岡の声には、張りがなかった。疲れ切った男の声だった。「ハプニングバーに連れてゆけ、三人プレイがしたいと、どんどん要求が過激になっていった。そして、わたしの赴任地には自分も必ず付いてゆく、と言うんだ。最後は東京が望みだという。六本木でも赤坂でもいい、お店を持たせてくれと言うんだ。裏金で、それができるはずだと」
 佐伯は、水村朝美の父親が警察官であったことを思い出した。ひと昔前の警察官には、権威主義的な男が多かった。娘を時代錯誤と言えるほどの厳しい戒律で育てるのがふつうだった。警察官のあいだでは、よく言われている。模範的な警官の娘は、なぜか跳んでしまう。性的に暴走する女は、案外父親が警官だったというケースが多いのだ、と。水村朝美も、例外ではないのか。
391〜392p

舞城王太郎「獣の樹」(****)

獣の樹 (講談社ノベルス マG-8)
獣の樹 (講談社ノベルス マG- 8)

◇出版社HPより:ある日ある朝、西暁町で、12歳くらいの僕が馬から生まれる。
記憶も名前もない。
でも名前なんかいらない、と僕は思う。
自分が誰だってどうでもいい……のに、正彦が僕を弟にする。
それからヒトとしての生活にようやく馴れてきたところに蛇に乗る少女・楡(にれ)が現れ、僕を殺人現場に誘う。
冒険が始まる。
失踪した父親。
地下密室。
獣の大革命。
そして恋。
混乱と騒動の中、僕は暗い森を駆ける駆ける駆け抜けていく。
舞城王太郎が講談社ノベルスに舞い戻り投下する、新しい小説(テロリズム)!



■前置き

舞城作品には、ミステリの風味がまぶされた作品群と、文学の匂いが強い作品群の両方がある。

前者に属するものとして、デビュー作の「煙か土か食い物」、第二作の「暗闇の中で子供」などが挙げられる。
それらに共通する特徴としては…。
・残虐な形で人の死ぬ/死体が出てくる
・殺人の意図として「見立て」がある
などがあるんじゃないかな。
見立て…っていうのは、まぁ死体が躰の一部を見せるように埋められていて、その並べ方に犯人の意図があるというようなことで、Wikipedeiaにもほぉらこうして項目が割かれているね。
見立て – Wikipedia
■■見立て殺人 – Wikipedia

一方、後者の「文学臭作品グループ」は、人が死んじゃったり殺し合いが起きたりはするものの、あまりその謎を解くというくだりはなく、むしろ人の死に直面したシーンを描かれることに意味があるっつーか。
ワタクシが、舞城作品のなかでもっともフェバリットなもののひとつである「山ん中の獅見朋成雄」とか、あとは直木賞候補作「阿修羅ガール」などが、これらの作品群に属する。


■で、本作は?

ということで、本作は前者のテイストが強い作品だった。
でも、主人公は、「山ん中の獅見朋成雄」「SPEEDBOY!」と同様、超人的な身体能力と走力を持つ成雄くんなのだ。
登場人物は「成雄シリーズ」のようでいて、見立て殺人、親子の血縁問題…など「煙か土か食い物」「暗闇の中で子供」的なテーマが描かれるという。
そういう意味で、ハイブリッドな作品なのか。

ストーリー的には、馬の子宮から出てきた少年・成雄が、まったく記憶のないまま、自分の親は誰なのか?を探る自分探しの物語。
そして、蛇の口に入って移動する少女=ファム・ファタールとの恋愛劇。
そして、見立て殺人。
そして、遺伝子工学!?
…、内容の方も、いろんな要素のハイブリッドって感じで、それが独特の疾走感ある文体で綴られている。

荒唐無稽でありながら、切迫感があって、個人的にはすごく楽しめた。
というか、こんな分厚いのに、電車や喫茶店で読み込んで4日間で読み切れた。
没入できた。
ちょっと、また、旧作を読み返してみようかな。

★なのに正彦になしきサボロッカ牧場の事件の話をしてしまうと、僕はうまく走れなくなってくる。まだ全然他のヒトよりは速いが、以前は風を追い抜くことだってできたのに、今は何だか足が重くて骨とか肉とかが僕にぶつぶつ不満を言っているような気がしている。「おいおい成雄よ、お前いつまで馬みたいなふりし続けるんだよ?」。僕の手足も骨も背骨も正しい。僕は僕を騙しているのだ。そしてそれに気がついてしまっている。……151p



※過去ログ
舞城王太郎「ビッチマグネット」@新潮2009年9月号(***) – Sex & Books & Football
舞城王太郎「みんな元気。」(**) – Sex & Books & Football
舞城王太郎「SPEEDBOY!(スピードボーイ!)」(****) – Sex & Books & Football
舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」(***) – Sex & Books & Football
舞城王太郎「山ん中の獅見朋成雄」(****) – Sex & Books & Football
舞城王太郎「九十九十九」(***) – Sex & Books & Football

万城目学「鹿男あをによし」(***)

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

07年4月発行の単行本から遅れて、文庫版が登場だ。
「鴨川ホルモー」が京都の歴史をベースに、今作は奈良の歴史をベースにした荒唐無稽な物語。
最新作「プリンセス・トヨトミ」は大阪が舞台なので、”三都物語”か。

★雌鹿がもぐもぐと口元を動かした。まるでしゃべろうとしているみたいだとふと感じたとき、鹿が「びい」と鳴いた。本当に「びい」と鳴いたのである。さらには、
「鹿せんべい、そんなにうまいか」
としゃべった。完全に硬直するおれに、鹿はゆっくりと続けた。
「さあ、神無月だ——出番だよ、先生」77p

越前魔太郎「魔界探偵冥王星O ヴァイオリンのV」(**)

魔界探偵 冥王星O ヴァイオリンのV (講談社ノベルス)
魔界探偵 冥王星O ヴァイオリンのV (講談社ノベルス)

「魔界」の住民たちをめぐるグロホラー、です。
江戸川乱歩の怪人二十面相を思い出した。
なお、越前魔太郎は舞城王太郎の変名ではなく、舞城王太郎のコンセプトをもとに幾人かの作家がストーリーをかき分ける…その統一ネームであった。
ちゅーん(´・ω・`)

冥王星O:映画「NECK」の劇中作家が覆面デビュー 講談社と電撃からラノベ同時展開 – MANTANWEB(まんたんウェブ)

8月公開予定の映画「NECK(ネック)」に登場する架空の作家「越前魔太郎」名によるライトノベル2本が「魔界探偵 冥王星O(オー)」シリーズとして 6日に講談社ノベルズ、10日に電撃文庫からそれぞれ出版。複数の作家が覆面でかかわっており、同一名義の同一シリーズの小説が、異なる出版社から同時に 発売されるのは出版界初の試みだ。

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