- 2011 年 1 月 27 日 12:30 AM
- 書籍一般
■逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録
※イラストは本人画。
「市川市福栄における英国人女性殺人・死体遺棄事件」の被疑者が、約2年半の逃亡生活を綴った告白書だ。
失礼ながら、シンプルに興味深かった。
手ぶらで警察の手から逃れた「彼」が、日本中を逃げ回る。
匿う者もいない、ひとりでの逃走。
人相を変えるため、自分で鼻を糸で「縫い」、下唇をはさみで切り、ホクロをカッターで取る。
人と会わないように、沖縄の離島で自分で魚を釣ったりしながら生きる。
ドラマチックすぎる。
まさに、事実は小説より奇なり。
全体の流れは3つに別れる。
殺人——取り返しのつかないことをしてしまった。
それがゆえの離人感から、わけもわからず逃亡するのが「パート1」。
小説「死国」の記憶から、お遍路を回れば死者が甦るのではないか?
そう思って、四国を歩き回る「パート2」。
そして、気持ちに少しの落ち着きが生まれ、意識して「逃亡生活」を送るのが「パート3」。
沖縄の離島でのサバイバル生活。
大阪・西成で得た日雇いの仕事で、金銭を得る。
2つの生活を定期的にくり返していたのだ。
ワイドショーなどでは「自分の罪にたいして反省の色がない」と批難されているようだ。
そうかな?
個人的には、反省は感じられた。
前書きに、
「逃亡生活を何を考えてきたか、罪の懺悔として記したい」
とある。
あくまで記録文、回顧文。
その意味で、リアルさがあった。
犯罪を犯してしまった人間の、逃げたくなる気持ち。
自分を正当化したい気持ち。
対して、罪の意識。
それらの葛藤が、正直に、本当に正直に綴られているように思った。
自殺したくても、怖くてできないと悩むシーンなども同様だ。
逆に、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と書きまくられても、かえって信じられないというか…。
裁判対策のように思えてしまう。
ただ、一点だけ。
彼はリンゼイさんを「殺害した」とは明記していないのが、気になった。
・「なんであんなことを彼女にしたんだよ」85p
・「命を奪った」87p
・「本当にひどいことをした」133p
・「死体遺棄の時効が3年だったことは、逮捕されて取り調べの中で初めて知った。その時効の前に捕まってよかった」236p
・「許されないことをした」237p
などと書いている。
行間を読めば、殺人と死体遺棄はほぼ認めているように思える。
ただ、殺人が未必のものだったのかは明らかにされていない。
アクシデントで…という「弁明」の余地は残っている。
現状、彼は死体遺棄に加えて、殺人と強姦致死で起訴されている。
さて、裁判ではどういった供述が出てくるのだろう。
最後に、いくつか引用しておく。
四国を「お遍路」を辿りながら、逃亡していたときの話。
★四万十川に着く前に、古本屋でマンガ「バキ」を買った。
地下闘技場戦士が五人の死刑囚と戦う話の箇所を選んで買った。
自分も捕まったら死刑囚になる。
強くならないといけない。
強い死刑囚を見て、自分を励ますためだった。94p
フェリーで沖縄へ。
★ラジオがリンゼイさんの家族が来日すると告げていた。
申し訳なかった。
でも、「誰だって逃げる。誰だって逃げるんだ」って繰り返し自分に言い聞かせていた。101p
久米島からオーハ島へ歩いて渡る(引き潮のときは500mぐらい歩けば着けるらしい)とき。
捨てネコが、彼に近づいてくる。
★子ネコはガリガリで汚れて見えた。
飼い主に捨てられたんだろうと思った。
この辺は、カラスが時々飛んでいるし、食べものもないし、子ネコは生きていけないだろう。
僕は海を渡ろうとすると、ネコも後ろからついてきた。
海に入ればあきらめるだろうと思ったけど、海面から頭を出している。
岩と岩との間を飛んでついてきた。
でも、もう飛び移れる岩がなくなったのか、途中の岩の上でポツンと取り残されていた。
ネコを肩の背中側に引っかけて島に渡った。
途中、ネコが濡れることはなかった。134p
この後、彼は離島でネコと暮らす。
海に潜ったりして、食料を探しながら。
結局、大阪・西成で働くために久米島に再上陸するとき、ネコを放してやったという。
西成での「日雇い生活」。
昼に夜にと働く。
★この日の夜勤は朝五時までだった。
飯場に戻って30代(←注:同僚のこと)と昼の仕事へ出た。
土日も仕事があれば出た。
だから昼間の解体現場ではフラフラだった。
でも力は抜かなかった。
トイレの解体や下水管の解体では大便まみれで働いた。
誰か人のためになっている。
そう思うとうれしかった。
そしてこれは、罪の償いに少しでもならないか、と考えて働いた。156p
※参考
こんなん、売ってるのか。
■WANTED市橋 Tシャツ(ライトピンク) M
■幻冬舎、市橋被告『逮捕されるまで』を2万部重版:新文化 – 出版業界紙 – ニュースフラッシュ関連ページ
初版3万。
■我が一家全員死刑
殺人事件の被疑者の告白本といえば、これはえぐかった…。
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