- 2010 年 7 月 10 日 10:00 PM
- 書籍小説
■獣の樹 (講談社ノベルス マG-8)
◇出版社HPより:ある日ある朝、西暁町で、12歳くらいの僕が馬から生まれる。
記憶も名前もない。
でも名前なんかいらない、と僕は思う。
自分が誰だってどうでもいい……のに、正彦が僕を弟にする。
それからヒトとしての生活にようやく馴れてきたところに蛇に乗る少女・楡(にれ)が現れ、僕を殺人現場に誘う。
冒険が始まる。
失踪した父親。
地下密室。
獣の大革命。
そして恋。
混乱と騒動の中、僕は暗い森を駆ける駆ける駆け抜けていく。
舞城王太郎が講談社ノベルスに舞い戻り投下する、新しい小説(テロリズム)!
■前置き
舞城作品には、ミステリの風味がまぶされた作品群と、文学の匂いが強い作品群の両方がある。前者に属するものとして、デビュー作の「煙か土か食い物」、第二作の「暗闇の中で子供」などが挙げられる。
それらに共通する特徴としては…。
・残虐な形で人の死ぬ/死体が出てくる
・殺人の意図として「見立て」がある
などがあるんじゃないかな。
見立て…っていうのは、まぁ死体が躰の一部を見せるように埋められていて、その並べ方に犯人の意図があるというようなことで、Wikipedeiaにもほぉらこうして項目が割かれているね。
■見立て – Wikipedia
■■見立て殺人 – Wikipedia
一方、後者の「文学臭作品グループ」は、人が死んじゃったり殺し合いが起きたりはするものの、あまりその謎を解くというくだりはなく、むしろ人の死に直面したシーンを描かれることに意味があるっつーか。
ワタクシが、舞城作品のなかでもっともフェバリットなもののひとつである「山ん中の獅見朋成雄」とか、あとは直木賞候補作「阿修羅ガール」などが、これらの作品群に属する。
■で、本作は?
ということで、本作は前者のテイストが強い作品だった。でも、主人公は、「山ん中の獅見朋成雄」「SPEEDBOY!」と同様、超人的な身体能力と走力を持つ成雄くんなのだ。
登場人物は「成雄シリーズ」のようでいて、見立て殺人、親子の血縁問題…など「煙か土か食い物」「暗闇の中で子供」的なテーマが描かれるという。
そういう意味で、ハイブリッドな作品なのか。
ストーリー的には、馬の子宮から出てきた少年・成雄が、まったく記憶のないまま、自分の親は誰なのか?を探る自分探しの物語。
そして、蛇の口に入って移動する少女=ファム・ファタールとの恋愛劇。
そして、見立て殺人。
そして、遺伝子工学!?
…、内容の方も、いろんな要素のハイブリッドって感じで、それが独特の疾走感ある文体で綴られている。
荒唐無稽でありながら、切迫感があって、個人的にはすごく楽しめた。
というか、こんな分厚いのに、電車や喫茶店で読み込んで4日間で読み切れた。
没入できた。
ちょっと、また、旧作を読み返してみようかな。
★なのに正彦になしきサボロッカ牧場の事件の話をしてしまうと、僕はうまく走れなくなってくる。まだ全然他のヒトよりは速いが、以前は風を追い抜くことだってできたのに、今は何だか足が重くて骨とか肉とかが僕にぶつぶつ不満を言っているような気がしている。「おいおい成雄よ、お前いつまで馬みたいなふりし続けるんだよ?」。僕の手足も骨も背骨も正しい。僕は僕を騙しているのだ。そしてそれに気がついてしまっている。……151p
※過去ログ
■舞城王太郎「ビッチマグネット」@新潮2009年9月号(***) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「みんな元気。」(**) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「SPEEDBOY!(スピードボーイ!)」(****) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」(***) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「山ん中の獅見朋成雄」(****) – Sex & Books & Football
■舞城王太郎「九十九十九」(***) – Sex & Books & Football
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