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高田郁「八朔の雪―みをつくし料理帖」(****)


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

最初に言っておくと、ワタクシは時代小説をあまり読まない。
なので、以下の評価は時代小説としての感想ではなく、「小説」として感想ということで。

江戸時代に生きる若い料理人・澪を主人公にした、連作短編集なり。
澪はもともと両親を亡くして、上方の有名料理店に引き取られた身。
今では、訳あって、江戸の小さな蕎麦屋で働いている。
そんな彼女が、東西での味の違いなど料理作りに悩みながらも、周囲の人たちの暖かい支えとともに生きていく——。

まずすばらしいのは、主人公・澪のキャラクター。
絵に描いたような「不幸な境遇」に育った女の子なんですが!
それに負けず、けなげに生きていく。
正直で、一生懸命。
涙もろい。
お客の文句に反発する様が、まるわかり。
…などなど。
どこをどう切っても、「いい人」なんですな。

でもって、登場人物のほとんども「いい人」。
とくに、澪と同居している芳が気に入りました。
たとえば、長屋暮らしにやっと慣れてきて、近所に住む人たちにいろんな過去があったとわかったとき——。
澪にこんなことばをかけます。

★澪の表情がこわばるのを見て、芳は優しい声で続けた。
「なあ、澪。
ひとというのは口には出さんでも、それぞれに背負てるもんがある。
せやからこそ、ひととひと、お互いに寄り添うて、慰め合うて、生きていくんやろなあ」51p



ほかにも、ツンデレ的な態度を取る武士・小松原。
毎日、澪の店で食事をとる優しい医師・源斉。
澪が働く店の主人・種市。
長屋の隣人、おりょう。
吉原の料理人で、花魁の頼みを受けて澪の料理をもらいに来る又次。
それぞれが、ヒロインである澪を支えていくのだ。

たしかに、「お涙ちょうだいすぎる」「ご都合主義的物語」という批判もあるかもしれないけれど。
しかし、「水戸黄門」じゃないけれど、こういうストーリーだと安心して読めるよね。
うるっと来るポイントも多いので、電車の中で読むときは注意!

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