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2007年4月22日のアーカイブ

志水辰夫「青に候 あをにさうらふ」(****)

青に候
青に候
# 単行本: 354ページ
# 出版社: 新潮社 (2007/2/22)
# ISBN-10: 4103986042
# ISBN-13: 978-4103986041
# 内容: ゆきゆきて男。涼やかに女。訣別して、友――。侍の気骨を熟練の筆が描き上げる。
家中の一人を斬り、脱藩して江戸に戻った神山佐平。先君急死の真相をめぐって、ただならぬ気配が江戸表に漂い、暗い影が佐平につきまとう。忽然と消えた朋輩の足跡を佐平は追うが……。お家を担う重臣の苦悩、若侍の自在、凜とした女、そして刺客。己が一分を貫き通す武士を描いて清冽冴える、初の時代小説にして傑作誕生!



もう何度もこのブログに書いてるんだけど、大好きな作家・志水辰夫。
どれくらい好きかって、ここ十年ぐらい俺的好きな作家ランキング1位にランクインを続けてるぐらいだ。
で、シミタツさま待望の新作は時代小説だった。

知らない人もいると思うので説明すると、志水辰夫は「冒険小説」でデビューした(「飢えて狼」1981年)。
冒険小説っていうのはwikipediaの説明を借りると、
「冒険的要素を主たる属性とする小説。素材としては、歴史的な事件、戦争や革命、異文化、秘境、密命など、SFや推理小説(ミステリ)、スパイ小説、海洋冒険小説の要素や、壮大なアクションを盛り込んだものも多い」
って内容。
んー、これじゃわからんな。
まぁ、ある人間が事件とか陰謀に巻き込まれてさぁ大変!ってストーリーのものだと思ってもらえばいい。

でもって、SFっぽいの書いたり、エッチぃの書いたりしたあと、人情短編を多く書くようになる(「いまひとたびの」1994年など)。
短編で、ジンとするようなやつね。
たとえるなら、「鉄道員(ぽっぽや)」か。
そういえば、いまはなき渋谷三省堂書店で「いまひとたびの」の文庫に、
 「浅田次郎が好きなあなた、次はこの一冊!」
みたいな文章のpopが着いていたことを思い出したよ。
ないわー。

そして、シミタツ第三形態!
時代小説に進出したのが、「青に候 あをにさうらふ」というわけだ。


さぁ、そんわなけで、新聞の書評などを中心に話題になってる本書であるが。
個人的には、
「いーね! でも五つ星じゃないかな?」
ってのが率直な意見。
ぶっちゃけ、時代小説のいい読者じゃないのでね。
なもんで、表現とかでときどきわからないものがあったりして、いまいちどっぷり入り込めなかったりした。


お話は、主人公がサムライ、舞台設定が江戸時代にしてあるものの、「冒険小説」のフォーマットだ。
つまり、主人公が事件に巻き込まれ、命を狙われ、ひとり立ち向かう。
彼「が」好意を寄せている女性——ファム・ファタール。
いっぽう、彼「に」好意を寄せている女性もいて…。
おお、この三角関係は「背いて故郷」じゃないか!


ただ、物語をつむぐ文章が! 文体が!
志水辰夫なんだな。
そうだよ、これこれ。
文を読み、そのリズムに酔える作家はそうはいない。

★冷たかった。
濡れているせいではなく、何もかもひえびえと冷え凍ってしまった。
すきま風が吹き抜けていた。
身体の節々をえぐるように、なぶって風が通り抜けた。
五体を縮こまらせ、唇をふるわせ、うめきながら、おろおろと歩いた。
うめかずにはいられなかった。
よろめかずにいられなかった。
脚がもつれずにいられない。
気がついたら何もかも失っていたのだ。
誇り、自負、望み、喜び、満足。
これまで拠っていたと信じていたものすべてを失ってしまった。
行くところがなかった。
帰るところがなかった。
自分の居所がなくなってしまった。
この惨めさをさらけ出せるところがどこにもなかった。352p



最後にひとつ、触れておきたいのがラスト。
「チャンバラ」シーンを、だ。
ネタバレになるから詳しく書かないが、緊迫感があってすばらしい。
シミタツ小説のアクションシーンのなかでは最高のアゲ♂アゲ♂ぐあいだ。
んで、読みながら
「これ、スター・ウォーズ エピソードIIIのラストみたい。
 (ベーダーとオビ=ワン・ケノービの対決)」
と思ったりした。
シチュエーションとかがね。


※参考
「青に候」新潮社
志水辰夫の「きのうの話」

2007.1.5
新年だし、新規まき直しの意味もあるから、このさい予告しておきましょう。
書名は「青に候(あをにさうらふ)」。
タイトルからもおわかりのように筆者初の時代小説です。
これからしばらくは時代小説に専念するつもりです。


※過去ログ
Sex & Books & Football – 志水辰夫「飢えて狼」(***)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「裂けて海峡」(*****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「背いて故郷」(*****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「狼でもなく」(*****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「負け犬」(****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「男坂」(***)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「ラスト・ドリーム」(****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「約束の地」(****)
Sex & Books & Football – 志水辰夫「うしろ姿」(*****)

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