- 2005 年 12 月 9 日 2:55 AM
- 書籍一般
■シドニーへ―彼女たちの42・195km
出版社: 文藝春秋 ; ISBN: 4163569901 ; (2001/01)
東京国際女子マラソンで高橋尚子が復活した。
別に、日本人がみんなそうだからいうまでもないことだけれども、おれもQちゃん好き、大好き。
自分のチームをつくっての再出発。
周囲からの限界説。
直前のケガ。
そうした逆境があって、優勝してしまう。
マイナスからプラスへ。
アントニオ猪木がいうところの「振り子の理論」どおりだ。
だから、見る人の心が振り子のように揺さぶられる。
でも、シドニー五輪で彼女が金メダルをとったときはまさに「下馬評」どおりだった。
圧倒的な実力があって、名伯楽・小出コーチがいて――。
この本は、Qちゃんを含めた女子マラソン・ランナーが、シドニー五輪出場権をかけてどう走ったか、本番にむけどう準備したか、そして本番でどう走ったのか?
そんなようすが、各ランナーに密着取材をしてレポートされている。
Qちゃんにまつわる部分はやっぱ興味深い。
学生時代、陸上部の顧問は長髪の高橋に「髪を切れ切れ」と言ったけれど、彼女は従わなかったという。
時が過ぎて、リクルートの陸上部に入ってから。
ある日髪を茶色に染めてきたことを小出コーチからとがめられると、翌日高橋は髪の色を染め直してこう言ったという。
「私は、監督の望む選手になります。髪を白くしろと言われればします。だから見捨てないでください」
切実である。
けなげだ。
このコーチについていけば自分は大きくなれると信じていたからじゃないのかなー、などと読みながら思った。
その小出コーチまわりの話もおもしろい。
豪放磊落な性格の話はよく聞くけれど、緻密な部分もあわせもっているようだ。
なにせ、五輪前に
「生身の人間だから最後まで計算できないものもある。しかし、金メダルは獲れる。あとはこぼさないようにすることだ。どういう獲り方をするかなのだ」
と考えていたのだから。
また、持っている手帳には細かい字で書かれたメモで埋められているという。
「確信犯」なのだ。
ほかにも、高橋と同じくシドニー五輪の代表選手だった市橋有里が母親も感心するほどの「いい子」だった話とか、山口衛里が本番に向けて書いていた日記の文章、1万メートルに回った弘山晴美の夫婦愛、補欠になった小幡佳代子の心境、などなど。
彼女たちのエピソードが、いちいちほほえましい。
とはいえ、練習ともなると、脱水症状からか意識を失なってけいれんして倒れても「ハシレマス…」といったりする(市橋)。
私生活ではふつうの「女性としての顔」があり、狂気ともいえる熱意でトレーニングに励む「選手としての顔」がある。
ここにもまた「振り子の理論」があった。
amazon在庫ないけど、ユーズドは97円から。
なお、この本でも何枚もいい写真を取ってるYカメラマンは昨年、大麻所持現行犯で逮捕されている。
こんなに人生を賭けた女性たちをフィルムに収めておいて、ヤクに走るか…と思うと、ちょっと悲しくないですか。
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