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高木徹「ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争」(***)


ドキュメント 戦争広告代理店
ドキュメント 戦争広告代理店

出版社: 講談社 ; ISBN: 4062750961 ; (2005/06/15)

戦争・紛争などのニュース映像で、小さな子供が爆撃で傷ついた姿を見ることがある。
痛ましく、そして、爆撃を行なった側への激しい怒りがこみ上げてくる。
エセ人権団体とかエセNPO法人ならきっと、街に繰り出しデモるね。
だけど、そんなシーンが次のような「意図」のもとに「演出」されたものであったと知ったら、どうだろ?

★「たとえば、敵を砲撃するとき、迫撃砲をわざと病院の脇に設置するのです。こちらが撃てば当然敵が反撃してきて、見方の迫撃砲陣地を狙った砲弾がとなりにある病院の小児科病棟にも落ちます。それがサラエボにたくさんいた記者たちの手で報道されて世界の母親たちが同乗する、というわけです。国際世論をひきつけるために、自分の国民を犠牲にするやり方ですよ」(262p)


本書は、旧ユーゴ紛争においてボスニア・ヘルツェゴビナ政府の依頼を受けたアメリカのPR会社が、「情報操作」によって、いかに世界の論調を
 ・ボスニア・ヘルツェゴビナ=被害者( ´・ω・)カワイソス
 ・セルビア・モンテネグロ= 加害者(,,・Д・) イッテヨチ!!
に仕立て上げていったか、を追ったものだ。
著者はNHK報道局勤務。
2000年10月放送のNHKスペシャル「民族浄化 ユーゴ・情報戦の内幕」で取材した内容をまとめている。

PR会社はテレビ、新聞などのメディアにボスニア・ヘルツェゴビナ側から立った情報を流し、ボスニア・ヘルツェゴビナ外相のハリス・シライジッチを露出させる。「メディア操作」の重要性については、次の文章が印象的だった。

★「……(アメリカ)議会は国民の世論が賛成しない政策には予算をつけません。そして、アメリカ国民に声を届かせるには、なにをおいてもメディアを通して訴えることなんです」
★……著名人の発言が国際ニュースで流れるとき、数秒から長くても十数秒の単位で短く編集されてしまう。そのひとつひとつの発言の塊を「サウンドバイト」と呼ぶ。(話のセンテンスが長い人は、ニュースで扱われにくい。)


そして、アメリカのメディア、ひいてはアメリカ政府を動かすには、次のようなキーワードが有効なのだという。

★環境
★自由
★民主主義
★多民族国家

かなり大雑把にまとめると、
【モスレム人のみならずセルビア人やクロアチア人も共存する「他民族国家」であるボスニア・ヘルツェゴビナは、セルビア・モンテネグロの攻撃によってその「自由」と「民主主義」が侵されている。ついでに、美しい「環境」も破壊されちゃってるんだよー!】
という情報が繰り返し露出され、アメリカ国内に「親ボス・ヘル」側の流れができたいった、というのだ。

さらに、そこに「民族浄化」「強制収容所」という、キャッチーなワードが付加されることで、セルビア・モンテネグロ側のイメージは最悪になっていくのだが、それは本書を読むことで確かめてほしい。
「民族浄化」的な迫害も「強制収容所」的な捕虜収容所も、セルビア・モンテネグロだけでなくボスニア・ヘルツェゴビナにもあったのに、なぜセル・モンだけが悪者扱いされざるをえなくなったのか?――読んでると、だんだんセル・モンが可哀想になってくる。
ハッ、これもまた情報操作かっ。

※なお、
本書に出てくるPRマン、ジム・ハーフが作った会社
Global Communicators – Washington DC – Atlanta – Los Angeles – St. Louis
現在のボスニアについては、
Prirodna ljepota ボスニア・ヘルツェゴビナ発の現地情報サイトです
が詳しい。
気になる新刊、
終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ
終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ

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