- 2005 年 6 月 14 日 3:30 AM
- 書籍一般
■裏本時代
出版社: 幻冬舎 ; ISBN: 4344406729 ; (2005/06)
『FOCUS』『FRIDAY』『FLASH』『ENMA』『TOUCH』。
いわゆる写真誌が一時期隆盛を誇っていたことは知っているよね。
そしてキミは「幻の写真雑誌」といわれる『スクランブル』の存在を知っているだろうか?
…って、俺もこの本を読んで初めて知ったんですけどね。(‘A`)
■その他創刊号関係 古雑誌&古本Re-Make/Re-Model
1983/3 創刊号 スクランブル社 『 スクランブル 』
表紙イラスト:赤瀬川原平 // 中森明菜 // G・馬場 // 中曽根康弘 // 吉田クンのお父さん // RC・サクセション // 瞳みのる // ひろみ & 聖子 // 田丸美寿々 // 由美かおる // 東大アイドル研 // 美保純 // 北島三郎 // ジュリー夫人 // 廃盤レコード // 堀田徹 // 瀬古利彦 // 真行寺君枝 // 夕崎碧 // 杉良太郎 // 村田兆治 // 赤塚不二夫 // C・Mウラ話 他
今は文筆家として知られる著者の本橋氏は、この『スクランブル』の編集長だった。
発行していたのは新英出版。
新潮社と集英社から一文字づつ借用してこの名前をつけたのは、会長である草野博美――のちのAV監督「村西とおる」である。
(※上の古書サイトではスクランブル社とあるが、これは編集部のことかと思われる。発行元:スクランブル社、発売元:新英出版みたいなものか、と推測しておくが、本書では会社組織のコトまではっきり書かれていなかった。)
草野氏は男女のチョメチョメをそのままずっぽし載せちゃう、いわゆるあのその「裏本」ってやつを制作および販売することで(北海道に「北大神田書店」という書店チェーンをつくった)大金を得、出版業に乗り出した。
その一環として、『FOCUS』よりももっとスキャンダラスな写真誌を!ということで『スクランブル』は生まれる。
ただ、そのころから警察の「手入れ」によって裏本業界は壊滅しつつあり、当初の威勢のいい掛け声はどこへやら、あっという間に資金が尽きて、結局半年、10号で廃刊の憂き目にあうのだが。
本書では、そんな『スクランブル』の誕生から廃刊までが自伝小説ふうに描かれる。
草野”会長”に編集権を侵害されたり、ヤクザに抗議されたり、日本船舶協会とバーターやったり…、雑誌作り未経験・当時まだ20代だった著者はマリファナ吸ったりしながら、悩みぬく。
とはいえ、悩んでたってすぐに来る締め切り(隔週発行)。
だけどいいネタはなかなか集まらない。
…編集者としての悲哀が胸に迫る。
でもそれ以上に興味が引かれるのは、草野博美also known as村西とおる”会長”の人となりである。
本書から、いくつか印象的なことば、および著者の描写を取り上げると…
★「(英会話教材のセールスマン時代)当然いつもトップです。いちばんになるんだという強い願望があればなれるんです」
★「セールスマン時代には、応酬話法といって客と接する際にいかなる状況でも商品を売るテクニックを学んだわけですが……主婦であれ大学生であれサラリーマンであれ板前であれ、その人の存在価値を認めて褒め上げるんです。そしてこの商品を手にすることでさらにあなたの存在価値が高まるということをしゃべるわけです」
「なるほど、だから会長は肯定的な英語を連発するんですね」
「というと?」
「ナイス、ダイナミック、ゴージャス…」
★「大量消費社会のなかにあっては流通を制する者が資本主義を制する、という鉄則があるんです」
★金を出す立場をとことん利用した上に恫喝まがいの発言と相手の心をほぐす気配りの言葉、これが巧みに調合されて独裁者の経営が成立しているのだ。
★(営業時間終了まえに王子信用金庫に行こうとした草野は、タクシーに乗り、渋滞に巻き込まれると降りて全速力で走り出し、そしてまたタクシーに乗り…を繰り返す)
この男はいつもこんなふうに全速力で生きているのだろう。
そして自分ひとりだけではなくまわりの人間も全速力で走らせてしまうのだ。
★(ラスト、金貸しに追われた草野と新宿の喫茶店で会った作者)
会長は食べ残しのチーズバーガーを紙袋に入れて立ち上がった。
「編集長、忘れるなよ、おれたちのやろうとしたことを」
そういい残すと会長は紙袋を握りしめて去っていく。
尻の部分を真っ黒に汚した会長はネオンと闇が混じる空間に溶けていった。
取り残された僕は静かに目を閉じた。
店のざわめきが渦を巻き僕をどこかへ連れ去ろうとしている。
なお、
■村西とおるの世界
によれば、草野氏a.k.a.村西とおるはこのとき33歳。
すごい人生だ。
最後に余談だが、本書の中では、本橋氏がやってた写真誌が「スクランブル」と表記されてるが、「スクランブルPHOTO」と書くサイトも。
下のサイトにあったロゴを見る限り、「スクランブル」という文字に欧文が飾りっぽく掛かってる感じ。
■内容が一部紹介されているサイト
まぁ、編集長が「スクランブル」と書いてるんで、「スクランブル」でいいでしょう。
■スクランブルPHOTO – Wikipedia
スクランブルPHOTO(すくらんぶるふぉと)は、1983年創刊の写真週刊誌(実際は隔週刊)。版元となった「新英出版」は、後にAV監督として有名になる村西とおる(当時は同社の会長として本名の「草野博美」を名乗っていた)が設立した出版社。元々同社は裏本の製作を手がけていたが、その際に構築した裏本の流通ルートを使って正規の出版業にも進出しようとした、というのが「スクランブルPHOTO」創刊の動機だといわれている。1983年3月創刊。創刊後も雑誌の売れ行きそのものは悪くなかったというが、当時同社の経営を支えていた裏本の出版・流通が警察の摘発により困難になるにつれ資金繰りが苦しくなった上、会長の草野自身も全国指名手配になるなど次々に問題を抱え、同年7月にわずか10号を発刊したところで休刊に追い込まれる。そのため現在では同誌は「幻の写真週刊誌」「伝説のカルト雑誌」と評されることが多い。なお同誌の創刊から廃刊に至るまでの詳しい事情は、同誌の編集長を務めた本橋信宏による「裏本時代」(飛鳥新社、新潮OH!文庫)を参照のこと。
歴史
1981年 「FOCUS」創刊
1983年 「スクランブルPHOTO」創刊も間もなく廃刊
1984年 「FRIDAY」創刊(「FF」時代の幕開け)
1985年 「ENMA」隔週刊で創刊
1986年 「ENMA」週刊化、「TOUCH」「FLASH」創刊(「3FET」時代突入)。ビートたけしとたけし軍団「FRIDAY」編集部に殴りこみ
1987年 「ENMA」廃刊
1989年 「TOUCH」廃刊(「3F」時代へ)
2001年 「FOCUS」休刊
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