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2004年9月3日のアーカイブ

志水辰夫「裂けて海峡」(*****)

裂けて海峡
裂けて海峡

新潮社 ; ISBN: 410134518X ; (2004/08)

▼海峡に消えた弟。わたしが禁忌に触れた、夏。
志水辰夫のデビュー第2作(1983年1月、講談社ノベルス)。講談社文庫にも入っているが、このたび新潮社から新装されて再登場した。講談社文庫版は発売が1986年。ちと古いだけあって、現在は手に入りづらいし、活字のQ数が小さくて読みづらいのだ。それだけに、文字が大きく紙質もよい新潮社文庫版が出たのはよろこばしいかぎり。

本作、2度通読している。なので、買っていきなり読んだのは、ラストの文章。日本冒険小説史上にも残るといわれる3文だった。で、驚いた。…な、な、な、ななな…、文章が変わっとるーーーー!! 「山椒魚」の改稿以上の衝撃ですよ!って、まぁリライト後の「山椒魚」しか知らないのだけど。

その「変化」を見てみよう。未読の人でネタばれを気にする人はここまでで記事を読むのを止めていただければ…。

▼叙情と詩情あふれるラスト
講談社文庫版のラストシーンは以下のように描かれている。

 感じる。熱い血がからだの中を駆け巡っている。
 さあ、もういい。行こう。行かなくてはならない。
 再び意志の下に肉体を統率するのだ。
 立て。そして行こう。
 行かなくては。
 星だ。星が流れている。わたしの光芒(こうぼう)だ。理恵の瞬き(またたき)だ。
 そうだ。
 理恵。
 そばに行くのが少し遅れる。
 まだ、し残していることがある。
 すませてからそこへ行く。
 おまえのために祈っている。
 天に星。
 地に憎悪。
 南溟(なんめい)。八月。わたしの死。


これが、新潮社版では、最後の1行がこう変わったのだ。
 …
 天に星。
 地に憎悪。
 南溟。八月。わたしは死んだ。


※「南溟」とは三省堂「大辞林 第二版」によると、「荘子(逍遥遊)」に書かれたコトバで「南方にある大きな海」って意味らしいですよ!

リズム感としては前者のほうがよかった気もする。「わたしは死んだ。」という一文も確かに「強い」文だとは思うが。改稿の真意を知りたいところだ。
志水辰夫公式ページ
にも言及はない。

最後に、上のような文章がず~っと続く小説では決してないのでご注意を。
新潮社
ここで冒頭の文章が読めます。

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