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志水辰夫「背いて故郷」(*****)


背いて故郷
背いて故郷

背いて故郷
背いて故郷

実は、読んだのは双葉文庫日本推理小説作家協会受賞作全集51。
(アマゾンではもう買えないようす)

いや、講談社文庫版と同じ双葉文庫の背表紙が黒バージョンは持ってるんだけど、背表紙が白バージョンを発見したので、うれしくなって購入。これで4回目の通読だ。

改めて読み直しして思ったのは、センチメンタルでエモーショナルな<志水節>が意外と少ないこと。もう少し、後期の作品のほうが顕著だったのかな。記憶があいまいになっている。


で、<志水節>って何だよ~っていう人のために、吉野仁氏の解説文を参考にしつつ、説明してみます。

志水節の3大特徴

1)語尾を少しずつ変えたり、短い体言止めの文章を混ぜたりしながら、緩急の取れたリズミカルな文章を整えていく。

 山裾へ段丘上に築かれた墓地が早くから見えていた。成瀬家の墓地が最上段に位置している。墓地全体が切り石の垣で囲ってあった。墓石は十ばかり。中にまだ新しい白木の墓標がひとつあって、それが成瀬恵司の墓だった。

個人的には、
「~いた。<体言止>。~だった。」
(情景を目線が移動するように描いていって、特徴的な部分は短く体言止めでインパクトをつけて、その説明を付け加える)

という文章のつなぎ方を<志水情景描写構文>と呼びたい。


2)客観的な描写のあとに、主観的な描写を唐突に効果的に混ぜ、文章にたるみをつくらない。

 窓辺へ立ってガラス戸を開けた。辛うじての雪である。降るとも見せずにわずかに舞っている。掌に受けると触覚も残さず消えていった。風が殆ど動いていなかった。

 空に見えない星を感じた。


「また(電話が)かかってくるかもしれません。しばらくわたしのことは伏せておいていただきたいんです。たとえ誰からの問い合わせであれ、知らない、来ていないと」なるべくさりげなく言ったつもりだが少し力みが出た。寿美子がちらと瞼を上げてわたしを見た。彼女は首を振ってうなずいただけだった。
「気をつけて行ってらっしゃい」

 彼女が好きだ。



3)盛り上がるシーンでは、リズミカルに体言止めを繰り返す<詩的な文章>に変わる。

特に、本書ではラストの1ページ! 未読の人も、別にネタばれにならないので、ぜひ味わってほしい。

 言葉を返せなかった。笑みすら返してやれない。ひきつらせた顔でただ頭を下げるのみ。うつむき、会釈、身震いをして。背を曲げ、わたしは逃げ出す。行く当てもないひとり影。冬の巡礼、道、その果ての旅。

 夜道の向うに明かりがあった。門があって竹垣があり、笹と椿の生垣(*いけがき)があった。庭から松が枝を外へ延ばし、門柱に取り付けて雪洞(*ぼんぼり)型の門灯。雪に埋もれた小さな門松。

 路上にひとり女性が立ちすくんでいた。差し伸べてきて、白い二本の手。

 通り抜けた。声もなく、目もなく。

 わたしを許すな。その罪を今生(*こんじょう=生きている間)償わせてなお許すな。無限の苦しみを課さんがため、永劫わたしを生かしめよ。生きて地獄、果ててなお地獄。貶め、裁き、死してさらにその死体を苔打て(*むちうて…でいいのかな。本文中には振り仮名なし)。

 夜行列車の音が聞こえた。街の光りがほの白く空へ照射(*しょうしゃ)している。漂って鐘の音。凍てついて冬の道。冷たい、どこまでも冷たい雪の肌。夜の残影。

 音がする。わたしの傍らを歩いている足音がする。

 早季子が黙って歩いてくる。


あとは、掛け合いが楽しい会話文とか、キャラクターがしっかりしているとかまぁあるんですが、とりあえず文体的に特徴的な3ポイントということで。
ふぅ~、blog開設以来約半年、いちばん書きたかったことをやっと書いた気分ですよ。すっきり。

コメント:2

ゆみか 2011 年 11 月 1 日

趣味で「小説家になろう」サイトで、小説を書いている優美香と申します…。
こちらの記事を、今度アップするエッセイで、参考にさせて頂きたく思います……。
もしも不都合がありましたら、お知らせくださいますでしょうか。記事アップ後であれば、削除もさせて頂きます、よろしくお願い致します。

編集人 2011 年 11 月 7 日

ゆみか様。

コメントを気づくのが遅くなりまして失礼しました。
むしろ、有り難うございます!
よろしくお願いします。

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